シリコンバレー発SUKIYAKIレポート 2017年12月15日

本コーナーでは、事業開発コミュニティSUKIYAKIが実施したイベント、テクノロジーのトレンドなどについてレポートします。

宇宙ビジネスの今後の動向について



スカパーJSAT 荒堀真生子氏
近年、スタートアップを中心に変化がめざましいグローバルな宇宙業界のドレンドについて、30年以上前から衛星を使った宇宙ビジネスを行っているアジアNo.1の衛星事業者・スカパーJSATよりシリコンバレーに駐在し、シリコンバレーを中心にスタートアップとの提携を進めている荒堀真生子氏に話を聞いた。

■これまでの宇宙ビジネス
これまでIntelsat、SES、Eutelsat、Telesat、スカパーJSATという企業が、衛星を使った通信や放送を進めてきました。これらの企業は、Lockheed MartinやBoeingのような衛星メーカーに発注しオーダーメイドで衛星を製造してもらい、その衛星をSpaceXなどのロケット打ち上げサービスを利用して宇宙空間に運んでいます。衛星がロケットで宇宙空間に行ったら、自社で衛星を運用してお客様にサービスを提供しています。 

■「小型の低軌道衛星の流行」
従来、スカパーJSAT含むこれらの企業は基本的に一機あたり約数千kgの大きな衛星を上空36000kmの宇宙空間に打ち上げて15年間以上の自社の通信、放送サービスを提供してきました。しかし、最近は全く異なるアプローチをするスタートアップが現れました。昨年、ソフトバンクが巨額の投資をしたOneWebというスタートアップは一機あたり数百kg程度の小型衛星を上空1200kmの宇宙空間に2600機ほども打ち上げ、全地球をカバーする通信ネットワークを構築する計画を進めています。これまでロケットサービスを提供したSpaceXも低軌道衛星を活用した通信ネットワーク構築計画に乗り出しており、小型衛星約10000機を使う計画を持っています。

低軌道衛星の活躍は通信だけではありません。地球に近い高度にあることから解像度の高い写真を撮ることが可能で、「地球を観測する」ことができます。例えば、Planetというサンフランシスコ発のスタートアップは従来の地球観測衛星よりもうんと小さい100kg未満の安い衛星を多く打ち上げて2m-5mの解像度で写真を撮ることを進め、11月に衛星150機ほどを使って地球のすべての陸域の写真を毎日新しく撮影するという偉業を達成しました。最近、この会社は1m未満の解像度の写真を撮ることができるスタートアップを、Googleから買収したために様々なものを観測することが可能になっています。
また、「観測する」ことから一歩進んで「観測したビッグデータで地球上のあらゆる活動を分析し、予測する」スタートアップが出現しました。Orbital Insightというシリコンバレー発のスタートアップです。地上のオイルタンク、Macy’sやWhole Foodsの駐車場にある自動車の数を衛星画像から自動認識、分析し石油供給量や大手小売業績などの経済トレンドをいち早く正確に掴んだり、地球上の人類の活動を予測するようなモデルを開発しています。
通信でも観測でも、これほど多数の衛星を打ち上げられるようになったのは、SpaceXを筆頭とした低価格な打ち上げサービスが出現したことが大きな理由です。良い循環ですね。

■宇宙業界の今後
今後数年は、宇宙からのビッグデータとそれを分析した結果生まれるサービスが注目を集めるでしょう。それと同時に、「インフラ」である衛星からのデータを地上に送るためのサービスや、使われなくなった衛星を回収して宇宙空間を掃除するサービスが活発化するでしょう。宇宙旅行や、月資源、その他惑星開拓はまだ少し先かもしれませんね。

■「インフラ」から「価値創造へ」
これまでは位置情報や通信回線といった「インフラ」の要素が強かった宇宙ビジネスですが、シリコンバレー発のスタートアップによる様々な画期的な取り組みは、「人類の未来に貢献する新しい価値を宇宙技術によって創り出す」という宇宙ビジネスの原点に立ち返らせてくれているように感じています。私たちスカパーJSATはそれを原点にこれまで通信と放送に取り組んできましたが、今後はそれに限らない領域へ宇宙ビジネスの事業の幅を広げていきます。具体的に言うと、スカパーJSATはOrbital Insight社と、グループ会社のSNET社もPlanet社とそれぞれ代理店契約を締結しビッグデータ分析による情報サービスを始めとする新たな事業の準備を進めています。これらの取り組みを通してSpace-Scalableな市場に取り組んでいけるように、今後もますますシリコンバレーとの連携を深めて活性化していきたいと考えています。

SUKIYAKI
木村将之
SUKIYAKI代表。 トーマツベンチャーサポート株式会社シリコンバレー事務所Managing Director。筑波大学院非常勤講師。
在シリコンバレー日系企業による新規事業開発を目的とした互助会。「日本を元気に!」をテーマに、シリコンバレースタートアップとの連携による新規事業開発に必要な、機会の創出、組織変革、個人の能力育成につながる活動を定期的に行う。
www.svsukiyaki.com