SUKIYAKI、Jweekly協賛イベントInnovator & Innovations『ハードウェアのシリコンバレー深訓の今~シリコンバレーとのコラボレーションの可能性』
今月9日(金)、PlugandPlayにて、SUKIYAKI、Jweekly協賛イベントInnovator & Innovations『ハードウェアのシリコンバレー深訓の今~シリコンバレーとのコラボレーションの可能性』が開催された。ゲストスピーカーとして、株式会社ジェネシスホールディング社長藤岡氏、東京大学社会科学研究所准教授伊藤氏が登壇。会場には、約100人以上の参加者が、SAPPORO、三和酒類、伊藤園、Salad Cosmoから提供いただいた飲食物を片手に会場を埋め尽くした。
まず講演では、中国、深訓の最新動向を伊藤氏に解説頂いた。そこで、中国の最新技術を社会実装するスピード感について理解を深めた後、藤岡氏による世界一のハードウェアサプライチェーン&エコシステムを実現している深訓について現場の生生しいエピソードを交え、お話いただいた。後半では、パナソニック森氏を交えたパネルディスカッションも開かれ、今後の深訓~シリコンバレーの連携についても話が及んだ。Q&Aタイムでは参加者からの質問が止むことはなく、会場は大いに盛り上がった。
今回登壇した藤岡氏著『「ハードウェアのシリコンバレー深訓」に学ぶ—これからの製造のトレンドとエコシステム』ハードウェアのシリコンバレーとして世界の注目を集める広東省深訓市がどのような変遷をたどって今の地位を築いたのか、藤岡氏の2001年~現在に至る体験から解き明かす。
左より:SUKIYAKI代表 木村氏、ゲストスピーカー伊藤氏、ゲストスピーカー藤岡氏、パナソニック 森氏
「Innovator & Innovations」とは、シリコンバレー×イノベーションの分野で活躍する日本人にスポットライトを当てた講演イベント。本コラムでは、イベントに先立ち登壇者の経歴、実績、魅力をご紹介。
株式会社ジェネシスホールディング代表取締役社長 藤岡 淳一 氏
東京大学社会科学研究所准教授 伊藤 亜聖 氏
■藤岡氏、伊藤氏とシンセンの関係
藤岡氏:専門学校卒業後、派遣会社に就職。ソニー等の工場で電子製品の製造に携わる。2001年、香港系ベンチャー企業にヘッドハンティングされ、転職早々に台湾行きを命じられる。この頃からシンセンの製造業と関わりを持つようになる。自らの勤める会社の黒字倒産、社長の蒸発などの苦難を乗り越え、「ハードウェアのシリコンバレー」とまで呼ばれるようになったシンセンの変遷と共に歩み自らを変化させてきた。2007年にデジタル家電企業を設立し、売却。2011年にはJENESISを創業し、現在はシンセンの工場で法人・ベンチャー企業向けのIoTデバイスの製造受託に日々腕を振るっている。
伊藤氏:学生時代から中国経済に興味を持ち、2度の中国留学を含めて過去10年あまり中国経済の研究に従事している。現在、東京大学社会科学研究所准教授。中国経済の構造改革やイノベーションを研究テーマとし、現在新興企業の拠点となった深圳(シンセン)市の深圳大学中国経済特区研究センター訪問研究員として在外研究中。
■シンセンのエコシステムが形成された経緯
従来のシンセンのサプライチェーンエコシステムは、台湾系のEMSにより育てられた世界の下請け部品メーカーが中心であった。大量の製品を安く作る事にたけており、サムスン等のスマホなどを作ることにより繁栄していたシンセンだが、5年ほど前にサムスンがスマホや周辺機器の製造をベトナムに移管し、風向きが一変する。取り残された多くの部品企業は、部品メーカー同士で協力し、汎用品を活用、組み合わせた完成品を作り始めた。汎用品の組み合わせであるため、小ロットでも、とにかく早く、安く作れるのが特徴である。これらの汎用製品をOEM化し、販売し商売にするために、プライベートブランドの製品化を手助けをするデザインカンパニーが多く出現した。その周りに工場、部品メーカー、検査会社、物流会社が集積し、シンセンの製造エコシステムが形成されていった。
■何故シンセンに企業が集まるのか?
シンセンは多くの企業を集め、イノベーション都市へと変貌を遂げている。シンセンのサプライチェーンとエコシステムのコストの安さ、製造スピードの速さを求め、世界中のハードウェア・スタートアップ企業が集まってきているのである。これを更に加速させる要因として、政府の影響と技術、スタートアップトレンドがあげられる。
中国政府は、高付加価値な産業をシンセンに根付かせるべく、低付加価値産業を他の地域に移転させ、イノベーションに取り組み、付加価値を上げるよう促している。また、「双創」と言われる新興企業によるイノベーションを促進する中国の経済戦略により、シンセンには政府の支持を受けたスタートアップを支援するインキュベーション施設が林立し、スタートアップフレンドリーな状況がつくられているのである。
それに加え、スタートアップ側もシンセンのエコシステムを活用したがっている。IoTがトレンドとなっていることも大きな要因である。あらゆる製品のIoT化によりにより、様々なデバイスが求められるようになっている一方、IoTの競争力のコアはソフトウェアサービスであることから、ハードウェアは低価格に抑える必要がある。これに、メイカームーブメントとハードウェア・スタートアップもあいまって、低開発費・小ロットでの開発製造を行うスタートアップ企業がシンセンに集中するようになってきている。
■シリコンバレー駐在日本企業の方々へのメッセージ
大前提として日本とは見方が180度違うのが面白い点です。日本の大手メーカーはどこかに課題が無いか、リスクが無いかを探します。一方で、シンセンの企業はできる方法を探す。シンセンでは、契約、商談における前置きがほぼなく、現金着金主義なのですぐ実行に移すので、本当にスピード感があります。日本企業には、このスピード感を是非利用して欲しいと思っています。IoTの製品は、とにかく早く市場に出してユーザーからデータとフィードバックを集めることが大事。世界的最も盛んに、IoTサービス構想、コンセプト設計を行うシリコンバレーにいる日本企業が、シンセンのスピード感のあるハードウェア開発の力を活用できる可能性を感じています。外と外(日本企業から外に出ているシリコンバレーとシンセンの動ける人同士)で世の中を動かすことができるよう、交流できればと思っております。
伊藤さん、藤岡さんのお話の続きは「Innovator & Innovations」イベントにて「ハードウェアのシリコンバレーで起きていること~シリコンバレー×シンセンの可能性」」というテーマでお話いただきます。