シリコンバレー発SUKIYAKIレポート 2017年1月18日

本コーナーでは、事業開発コミュニティSUKIYAKIが実施したイベント、テクノロジーのトレンドなどについてレポートします。

化学、素材企業のデジタル領域でのスタートアップ企業との取り組み



■化学、素材企業のシリコンバレー進出
現在多くの化学、素材企業が、シリコンバレーでの活動を開始しており、日系化学、素材企業に関しても進出、探索のための訪問が相次いでいる。多くの企業は新たな高収益新規事業を探索しており、ヘルスケア・ライフサイエンス、次世代自動車、エネルギー、次世代農業といった新たなマーケットへの参入を検討している。これらの新たなマーケットでは、AI・IoT等のデジタル技術活用による製品のコネクテッド化、サービス化、生産プロセスの革新が進み、付加価値、競争優位の源泉がハードウェアからソフトウェアに移っていくことが見込まれている。そのため、化学、素材企業も、AI,IoTなどのデジタル技術活用により、経営全体、ビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーション、新素材発見及び生産プロセスの最適化などによって競争優位を確保することを志向している。シリコンバレーは言わずもがな、AI,IoTを活用した新サービスの聖地であり、化学、素材企業はシリコンバレースタートアップの技術、ビジネスモデルを自らに取り入れようとしている。以下では、デジタルに関連する領域でのスタートアップ企業との取り組みを紹介する。

■シリコンバレーにおけるスタートアップ等との取り組み
  1. デジタルトランスフォーメーション (The Climate Corporation, 買収,2006年創業,サンフランシスコ)
    独バイエルに2016年に買収された米農薬大手のモンサントは、2013年に、機械学習を利用したビッグデータ解析による気候変動予測などの農業ビジネスのために必要な情報を提供するThe Climate Corporationを約10億ドルで買収し、自らをケミカルの会社から農業に関するありとあらゆるデータを取得し、解析するデータサイエンスサービスカンパニーと定義しなおした。従来の農薬、種子の販売ビジネスからの転換を目指し、農薬、種、農場、天候などの農場に関するデータ全てを収集し、AI解析することが可能なデータサイエンスプラットフォームの提供を行っている。利用者である農家は、同プラットフォームを、散布する種子、農薬、水の種類や場所などのインプット最適化、収穫高などのアウトプット予測、最大化に役立てている。
  2. 新素材発見(Citrine Infomatics, $7.6M調達,2013年創業,レッドウッドシティ)
    情報処理能力を活用し、新材料や代替材料を効率的に探索するマテリアルズ・インフォマティックスへの取り組みも活発である。同分野では、70万を超える化合物、細胞、ナノ材料等に関する情報、分析された情報に関するアナリティクスツールをプラットフォームとして提供する米国のマテリアルズプロジェクトが有名である。スタートアップ企業としては、Citrine Infomaticsが、材料と化学物質に関する、特許、研究論文、技術レポートに関する情報を扱うデータベースを構築している。利用企業は、自社で保有するデータとデータベースのデータから、様々な条件下での材料および化学物質の挙動をAI解析し、新素材発見プロセスを2倍から5倍短縮することができる。1000社を超える企業が同社のサービスを利用している。
  3. 生産プロセス最適化 (Sight Machine, $30M調達,2012年創業,サンフランシスコ)
    SightMachineは、プラントからのデータの取得、目的に応じたAIモデルによる解析、解析結果の可視化を行う一気通貫したソリューションを提供している。プラントで発生するありとあらゆる形式のデータを統合的に処理し、目的に応じた100を超えるAIモデルで解析できることが強みであり、大手企業を顧客に持つ。同社の技術活用により、化学、素材企業は全世界でのプラントオペレーションの比較、可視化、最適化を図ることができる。


SUKIYAKI
木村将之
SUKIYAKI代表。 トーマツベンチャーサポート株式会社シリコンバレー事務所Managing Director。筑波大学院非常勤講師。
在シリコンバレー日系企業による新規事業開発を目的とした互助会。「日本を元気に!」をテーマに、シリコンバレースタートアップとの連携による新規事業開発に必要な、機会の創出、組織変革、個人の能力育成につながる活動を定期的に行う。
www.svsukiyaki.com