シリコンバレー発SUKIYAKIレポート 2018年7月20日

本コーナーでは、事業開発コミュニティSUKIYAKIが実施したイベント、テクノロジーのトレンドなどについてレポートします。

地球規模の食糧危機を救え
課題を解決する人工的食肉関連スタートアップ


人工的食肉が、増え続ける人口と食肉需要の増大から深刻さを増す将来の地球規模の食糧危機を救う方法として人工的食肉が注目を集めている。
著名人も同分野に強い関心を示している。元マイクロソフトのビル・ゲイツ氏は財団を設立し、社会課題を解決するスタートアップや研究を支援している。2012年に財団が支援するシアトルの研究所を訪れた際に、マラリアなどの伝染病を運ぶ蚊を撲滅するレーザー装置と並ぶ重要テーマとして説明を受けたのが、動物を殺傷せずに済み、環境にも健康にも優しい人工的食肉の開発であった。同氏は、本日紹介するスタートアップにも複数社投資をしており、人工的食肉を応援する著名人の一人である。
人工的食肉には、3つの流れがある。1つ目は、動物性の食材を一切使わない植物性食肉(Plant based meat)、2つ目は、食肉を細胞培養(Cellular Agriculture)で増やす方法、3つ目は、繊維の太さが比較的動物性の食肉に近い菌類(フンギ)を活用した食肉の3つである。本コラムでは、各領域の代表的なスタートアップを紹介する。

  1. 植物性食肉 Impossible Foods (Redwood City,CA $387.5M調達)
    同分野の先駆けとして知られるのが、ビル・ゲイツ氏の支援を受けるImpossible Foods社である。Impossible Foods社が開発した植物性ハンバーガー'Impossible Burger'は、動物性の食材を一切使わない植物性食肉のハンバーガーである。主たる原料は、小麦、タンパク質、ココナッツオイルやジャガイモのタンパク質だ。本物の肉よりもタンパク質が多く、脂肪が少なく、コレステロールも含まれていないので健康に資するという。また、環境面からも従来の牛肉の製法に比べ、水を95%、温室ガスを87%削減するという。東海岸を中心に店舗展開をする大手ハンバーガーチェーンWhite Castleの$1.99のミールに組み込まれ全米140店舗で供給されており、PaloAltoの別のハンバーガー屋などでも味わうことができる。Impossible Foodsは合計約$400Mを調達し、植物性ハンバーガーをアジアにも本格展開予定であるという。
  2. 食肉を細胞培養に増殖させる人工的食肉
    -Memphis Meats(SanFrancisco,CA $20.1M調達)
    -Finless Foods(Berkley,CA $3.5M調達)
    -Integriculture(日本, 3億円調達)
    同分野では、培養肉を培養液の中で増やし、肉の塊へと固めていく方法が主流となっている。鶏肉を細胞培養によって養殖するMemphis Meatは、業界の中で先駆け的に牛肉、鶏肉の細胞培養による人口肉に挑戦し、$20Mを超える資金の調達に成功している企業である。
    魚肉では、以前本コラムでも紹介したFinless Foodsという企業が挑戦しており、FinlessFoodの共同創業者Brian Wyrwas氏は、「1つの細胞から細胞培養、増殖を行い、食用の魚肉を作る。3年以内にすり身の市販化を目指し、食糧問題及び海洋汚染問題の解決を目指す。」と意気込む。同ベンチャーもコラム掲載後、$3M以上の資金を調達し勢いづいている。この流れはあらゆる食肉に広がっている。
    同分野では周辺スタートアップも盛んになって来ている。一例として挙げられるのが、培養液を開発するIntegriculture社である。これまでは細胞培養に必要な培養液の価格がひとつの課題となっていたが、同社では現行の培養液に含まれる動物性由来の物質を一般食品を原料に置換する技術を開発し、動物由来成分を不使用にすることで、低価格の培養液を実現している。
  3. 菌類を活用した食肉 Terramino Foods(SanFrancisco,CA シード)
    Terramino Foodsは、人工的食肉生成の手法として従来主流であった「植物性食肉(Plant based meat)」と「細胞培養(Cellular Agriculture)」に続く方法として、菌類の活用を推奨する。Terramino Foodsは「植物の繊維は動物の繊維に比べ太すぎるため、食感や風味を保つのが困難である。また、細胞培養は培養に時間がかかり、製造コストも比較的高額である。」と考える。これを解決するために、植物よりも動物の繊維に比較的近い形状を持ち、植物のように低コストでの培養が可能な「菌類の繊維(Fungi Fiber)」を活用した食肉開発に取り組んでいる。具体的には、菌類のタンパク質に自然加工を加え、タンパク質に富む、コレステロールが無いサーモンを開発中である。


様々な方法で、食肉確保のための環境破壊、持続可能な環境の創出という地球規模の課題に立ち向かうスタートアップから目が離せない。
SUKIYAKI
木村将之
SUKIYAKI代表。 トーマツベンチャーサポート株式会社シリコンバレー事務所Managing Director。筑波大学院非常勤講師。
在シリコンバレー日系企業による新規事業開発を目的とした互助会。「日本を元気に!」をテーマに、シリコンバレースタートアップとの連携による新規事業開発に必要な、機会の創出、組織変革、個人の能力育成につながる活動を定期的に行う。
www.svsukiyaki.com