シリコンバレー発SUKIYAKIレポート 2019年5月3日

本コーナーでは、事業開発コミュニティSUKIYAKIが実施したイベント、テクノロジーのトレンドなどについてレポートします。

インタビュー : 株式会社スイッチサイエンス 高須 正和 氏


■活動の紹介
高須氏は、中国とくに深センの最先端のイノベーションの在り方を発信し、メイカームーブメントと日本のメイカーズを繋げる活動を行っている。深センでのニコ技深センコミュニティ(Nico-Tech Shenzhen)という技術者・研究者・起業家など多様なバックグラウンドの個人が集まるコミュニティを運営している。このコミュニティを通じて日本のスタートアップへの製造支援を行い(多くはコミュニティの共同創業者である藤岡淳一社長率いる深圳JENESISによる)、勤務先であるスイッチサイエンスでは、深センや東南アジア発ツールの日本へのマーケティング、海外企業への投資・支援などのビジネス開発を手掛ける。

■ ソフトウェアイノベーションの民主化
従来の大組織主導のイノベーションは、大組織がコストを集中投下して行うため、計画や予算取りが重視されウォーターフォール型の開発が行われてきた。一方で、2000年ぐらいからオープンソースソフトウェアが出てきて、小規模な組織が柔軟にサービスを開発する事が可能になり、世の中が変わった。GoogleやFBのようなサービスの開発環境を、インターネットに接続すれば誰でもそろえられる時代になってきた。これにより、サービス開発が民主化(デモクラタイズ)されたといえる。

2006年ころからは、サービスのSNSでの広告宣伝に加えて、クラウドコンピューティングが始まり、マーケティングと、企業の規模拡大についてもパラダイムシフトが起きた。企画書ベースで必ず成功するまで検討するという状態から、とりあえず作ってみる世界へ、三振しても次の打席でホームランを打てばよい時代になったともいえる。イノベーションは、エンジニアが考え、エンジニアが企画し、エンジニアが売ることにより達成されるようになった。賛成する人が少ない「合理性では判断できない企画」を推進し、成功する確証が無い段階で、とにかく市場に出すことがイノベーション成功の法則となってきた。

■ ハードウェアイノベーションの民主化(メイカームーブメント)とは



2012年からは、このようなオープンソース、クラウドを使ったイノベーションがハードウェアでも可能になった。これをメイカームーブメントという。デジタル工作ツールの登場前は、ハードウェアの開発は長年の経験を要する限られた人のものだったが、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルツールはソフトウェアに近い短期間で開発を始められる。ハードウェアを造る際の知識のハードルが極端に下がり、時間をかけずに、誰でもハードウェア会社を作れるようになった。単純化していえば、ソフトウェアで起きたことが、続いてハードウェアでも置きつつあるといえる。

■ 深センの登場
ソフトウェア開発はオープンソースソフトウェアとPCで可能となるが、ハードウェアを量産するには通常まだまだコストがかかる。深センでは、中間製品である量産部品までを手軽に製造することができる中小規模製造業が集まっている。このコスト感、スピード感を活用しようと、ハードウェアのイノベーションを求める人が深センに集まるようになってきた。

代表的なプレーヤーとして、世界中のハードウェア企業をサポートする、深セン発のSeeedという企業がある。2008年に深センで創業し、オープンソースのハードウェア開発ツールを開発・販売する、個人が発明したハードウェアの開発基盤を販売し、ハードウェアの製造に必要なサービスを販売している企業である。Seeedは、発明家とレベニューシェアモデルでのビジネスモデルも展開している。

HAXは、SOSVグループの世界初のハードウェア専門のアクセラレーターで、サンフランシスコに本社を、深センに開発ラボを持つ。年に2000件の応募を審査し、半年に15件を採択し深センで、4ヶ月ほどでKickstarterに出品できる状況まで開発合宿を行う。

両者が深センを活用する理由として生産の柔軟性が挙げられる。ICチップからカスタマイズをしたハードウェアの製造まで、チップから中間品まで非常に多くの種類のハードウェア製造まで手掛ける工場もあり、数量に関しても柔軟な工場が揃う。これにより、深センは1000個や2000個といった小ロットでハードウェアを生産を行うのに最適な場所になっている。例えば、日本では最低ロットで10000個×1万円で最低1億円のロットであったハードウェアが、深センでは1000個×5000円の500万円で製造が可能な状況となる。

中国はこの環境を活用して、多産多死、計画できない時代への対応として、深センをイノベーションのゆりかごとして活用する。中国はイノベーションの中でも、ユーザーエクスペリエンスなどが差別化となる社会実装イノベーションに注目し、ハードウェアについてもとにかくやってみるイノベーションの文化を深センを活用して根付かせようとしている。

▶高須氏による深センのより深い話は、5月16日(木)の「Innovator&Innovations メイカームーブメント~深センの裏側に迫る~」にて。

メイカームーブメント〜深圳(シンセン)の裏側に迫る〜
日時:5月16日(木)19:00開場 19:30講演 スタート
場所:Plug & Play (440 N Wolfe Rd, Sunnyvale, CA 94085)

>> イベント詳細
高須 正和(たかす まさかず)
株式会社スイッチサイエンスGlobal Business Development。エッジコンピューティング、IoTマイコンボード等を手掛けるアジアのスタートアップを担当し、インターネットの社会実装事例を研究する「インターネットプラス研究所」の副所長、JETRO「アジアの起業とスタートアップ」研究員、早稲田大学ビジネススクール非常勤講師など。著書に「メイカーズのエコシステム」「世界ハッカースペースガイド」ほかWeb連載など多数。


SUKIYAKI

木村将之 : SUKIYAKI代表。 トーマツベンチャーサポート株式会社シリコンバレー事務所Managing Director。筑波大学院非常勤講師。


SUKIYAKI : 在シリコンバレー日系企業による新規事業開発を目的とした互助会。「日本を元気に!」をテーマに、シリコンバレースタートアップとの連携による新規事業開発に必要な、機会の創出、組織変革、個人の能力育成につながる活動を定期的に行う。www.svsukiyaki.com