第10回: Fiduciary Dutyって何?2015年8月14日

米国の法律では非常に頻繁に出てくる用語であるのに、その日本語の訳語のないものがあって困ることがあります。「Due Process of Law」もそのひとつですが、これは米国憲法上の概念なので、刑事案件を扱わない私はあんまり仕事では遭遇しません。(余談ですが、米国憲法って、国民を政府から守るためにあるって、ご存知ですか?)

私が仕事でよく遭遇するのは、「Fi-duciary Duty」という用語で、よく「善管注意義務」と訳されているのを見ますが、「Fiduciary Duty」には2つあって、「Duty of Care」と「Duty of Loyalty」とに分かれ、「Duty of Care」というのは「同様のポジションにある賢明な方が選択するであろうという方法で奉仕する」ということですので、これに「善管注意義務」は対応しますが、「Duty of Loyalty」には対応していません。

「Duty of Loyalty」というのは、「自分の利益を後回しにしてでも忠実に義務を果たす」ということで、例えばFamily Lawの世界では、親は未成年の子にFiduciary Dutyを負っているので、自分の身の危険をかえりみずに子の安全を守る、というのは、法の目から見れば当然のこと、という訳です。ビジネスの世界で言えば、会社(corporation)の役員(directors)は、株主全員(自分の持ち株の分だけではありません)に個人的にFiduciary Dutyを負っているので、自分の役員としての地位を利用して自分の身内と会社との取引をして会社に損失をもたらすと、その役員個人に株主から損害賠償請求ができます。日本にお住まいの方が、不動産投資コンサルタントに誘われて米国の不動産投資物件を購入され、大損してしまったという話をよく聞きますが、このような場合、このコンサルタントが不動産業のライセンスを持っていれば、クライアントにFiduciary Dutyを負うので、大損するような物件はお勧めしない「はず」です。

米国の弁護士もクライアントにFiduciary Dutyを負いますので、私も自分の利益を後回しにしてクライアントの方々にご奉仕しております。でも、そんなFiduciary DutyやDuty of Loyaltyの話は日本ではあまり聞いたことがありません。それとも私がもうアメリカが長いので知らないだけで、実はちゃんとそういう概念はあるのでしょうか?


山本 与志人 カリフォルニア州・テキサス州弁護士


滋賀大学卒業後、松下電工株式会社(現在はパナソニックに吸収合併)入社。米国出向後、仕事を通じて法律に関心を持ち、弁護士になることを決意。テキサス州とカリフォルニア州の弁護士免許を取得し、University of Alabama School of LawにてLL.M (Master of Law)の学位も取得。日米の企業文化・慣習や法律の差異の理解を活用し、税務・法律に加え、会計・企業経理に関する豊富な知識と経験を活かし、シリコンバレーのベンチャーキャピタルにCFOとして参画した経験もある。独立後の現在はシリコンバレーを拠点に、シリコンバレーの日系コミュニティー、又は日本に起点を置き、アメリカで新規に活動を展開する企業を支援する。また、アメリカにて活動拠点を持つ企業の税務・会計・経理など、会社経営で大切な事務 処理を「ワン・ストップ・サービス」で提供できる便利なサービスも展開中。


山本法律事務所
408-840-4727(Office)
www.yamamotolaw.pro
2975 Bowers Ave. Ste.119 Santa Clara, CA 95051
日本語でお気軽に
ご連絡下さい。