第11回:「No」と言えない日本人2015年9月11日

先日、ある会社からエキスパート・ウィットネス (専門家証人)として法廷で証言して欲しいと依頼がありました。通常の証人(事実証人・ファクト・ウィットネス)は、その訴訟に関わる事実を直接目撃するか体験したことしか証言でず、自分の意見や憶測は証言できません。また、他人の証言内容に影響されないよう、他の証人が証言するときに法廷内にいることも禁じられています。それに対しエキスパート・ウィットネスは、他の人の証言に基づく自分の憶測・推測・意見を証言します。今回私が意見を求められたのは、「日本のビジネスマンの行動・思考の傾向」。ある一定の状況において日本のビジネスマンはどういう行動をとる傾向にあるか、ということでした。

その証言でも言いましたが、ビジネスに限らず、日本人と米国人の反応で大きく異なると感じるのは、「No」と答えなければならない状況下での対応です。ビジネスマンでなくても経験があると思うのですが、例えば何かの日程を設定する相談時、相手に「x月x日はどうですか?」と尋ねられ都合が悪い場合、アメリカ人はあっさりと「No, it doesn’t work for me」と言うのに対し、日本人は「ごめんなさい、その日はどうしてもダメなんです。実は娘の誕生日でして」とか、「いや~、申し訳ない、その日はたまたまxxxがあって動かせないんです」というように、謝罪だけでなく、Noと言うことがどれほど妥当であるかを説明されて逆に戸惑うことがよくあります。お酒の席で勧められた盃を断ってはいけない…と教えられた記憶もありますが、「No」というのは非常に耐え難いうえに、あえて「No」といわねばならないという理由を理解してほしい…と、ついついその背後事情を説明してしまう傾向があると思いませんか?

極端な例、委託生産する契約交渉の場で、相手の希望する取引価格を提示され、それが受け入れられないくらい低い金額だった場合。単に「No」と言うだけでは言い足りないと、材料費や加工費の見積計算書まで見せ、「こんなにかかるのでその取引価格では採算があいません」と詳細に説明したくなるという話も聞いたことがあります。相手はとりあえずダメもとで思いっきり低い金額を提示しただけなのに、詳細な原価計算を見せてこちらの手の内を全てさらけ出してしまってでも「No」を正当化する…そんなことしたら大変なことになってしまいます。

日本人感覚には反するかも知れませんが、「No, thank you」とあっさり断ることに慣れないといけません。


山本 与志人 カリフォルニア州・テキサス州弁護士


滋賀大学卒業後、松下電工株式会社(現在はパナソニックに吸収合併)入社。米国出向後、仕事を通じて法律に関心を持ち、弁護士になることを決意。テキサス州とカリフォルニア州の弁護士免許を取得し、University of Alabama School of LawにてLL.M (Master of Law)の学位も取得。日米の企業文化・慣習や法律の差異の理解を活用し、税務・法律に加え、会計・企業経理に関する豊富な知識と経験を活かし、シリコンバレーのベンチャーキャピタルにCFOとして参画した経験もある。独立後の現在はシリコンバレーを拠点に、シリコンバレーの日系コミュニティー、又は日本に起点を置き、アメリカで新規に活動を展開する企業を支援する。また、アメリカにて活動拠点を持つ企業の税務・会計・経理など、会社経営で大切な事務 処理を「ワン・ストップ・サービス」で提供できる便利なサービスも展開中。


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