第2回:そもそも現地法人が必要なの?2014年12月12日

特に日本企業に限らず、米国外の事業体が米国で活動する際には、その事業体の形態によってどのようなメリット・デメリットがあるか、それぞれの状況に応じてそれぞれの場合の様々なシナリオを調査検討し、最適な形態を選択すべきです。世界に冠たる日本経済の一環を担われている日本企業の方々ですから、当然そんなことは百も承知されておられる、と思ってたのですが、残念ながら、そのような可能性を全く検討せず、「アメリカに進出するのだから、まず子会社を作りました。」とおっしゃる方がほとんどです。じゃあ子会社を早急に設立するくらいだから米国でのビジネスはすでに発生しているものだと思い、米国での売上の規模、経路(distribution channel)・組織・人員等について私が質問すると、多くの場合、「まだ何にも売上はありませんし、組織や人員もこれから考えます」という答えです。あるいは、米国進出の形態をお聞きしたら、「米国で投資家を募って、弊社(日本企業)と共同出資のベンチャービジネスを起こします」という方も結構多いのですが、そんな方々でも、「子会社の現地法人はもう設立しました」とおっしゃることがあります。とにかく、皆さん会社を設立される方向にあるようです。

米国で事業をするのに子会社を設立をしないで事業を開始するのか?という質問が当然出てきますが、もちろん、子会社を設立せずに事業展開をすることは十分可能です。単にシリコンバレーで行おうとすることを、子会社ではなく、外部エージェントやコンサルタント、弁護士を使って行うというだけのことで、子会社を設立して1~2人の従業員を雇用するよりはその業務分野の専門家・代行業者を使った方がコストパフォーマンスがよくなることは十分あり得ると思いますが、私が見る限り、日本の企業の多くの方々はそのような選択はされていないようです。

一番端的な例ですが、ビジネスそのものは日本から十分行えるが、米国のお客様のサポートには米国にもコンタクト先があった方がいい、とか、米国のお客様に対応するのは米国人がいい、ということで米国でカスタマーサポートやマーケティング・パブリックリレーションズの組織を置いて活動したい、という場合、その為の子会社を設立しても、新たなビジネスを生み出すわけではないので、子会社を設立したことで新たに発生するコストや経費を担うビジネスの収入は得られません。そこで子会社の運営の為の収入を得るには親会社のカスタマーサポート・マーケティング・パブリックリレーションズ等の役務提供を子会社が行ってその対価を親会社が子会社に支払う、というストラクチャにせざるを得ず、親子間で委託サービス契約を結ぶ必要があります。そうなると、子会社の米国の税務申告書には親会社の財務諸表を開示しなければならないだけでなく、その契約は関係会社間取引として移転価格税制の対象となり、間接的にではありますがIRSが親会社に対する司法所轄を得てしまいますし、子会社の課税所得は親会社の完全なコントロール下にあることになり、その正当性をIRSに問われた場合には、その立証には非常に困窮することになります。

また、現地法人はカスタマーサポート・マーケティング・パブリックリレーションズ等の役務提供しか行わないのであると、E-1 Visaの申請に必要十分な規模の売上をあげられません。同様にカスタマーサポート・マーケティング・パブリックリレーションズ等の部門だけで1~2人の従業員しか置かないのであれば、子会社に必要な資本投資もE-2 Visaを申請できるレベルに至らない可能性も高くなります。

また、現地法人が無ければ米国で訴訟されるリスクも低いわけですから、訴訟リスク面からも税務リスク面からも、「現地法人を設立しない」という選択肢は考慮されるべきです。


米国の事業形態について

ご承知の方も多いと思いますが、米国の事業形態には、partnership・LLC・corporation等があり、partnershipとLLCはpass-through taxationsでそれ自体ではincome taxを課されず、corporationにはcorporationとしてのincome taxが課されます。Corporationでも、S corporationの選択をすればpass-through taxationにできますが、日本の会社のような米国非居住者がpartner・LLC memberの場合、pass-through されるtaxable incomeはdis-tribution・配当がなくても源泉徴収税の対象になってpass-throughの意味が無くなってしまいますし、非居住者の株主が一人でもいるとS corporationの選択はできないとかで、結局ごく通常のC corporationを現地法人として設立することを選択するしかありません。


本コラムは一般的な法律情報の提供を目的としており、特定の事例に対しての法的アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は、法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

山本 与志人 カリフォルニア州・テキサス州弁護士


滋賀大学卒業後、松下電工株式会社(現在はパナソニックに吸収合併)入社。米国出向後、仕事を通じて法律に関心を持ち、弁護士になることを決意。テキサス州とカリフォルニア州の弁護士免許を取得し、University of Alabama School of LawにてLL.M (Master of Law)の学位も取得。日米の企業文化・慣習や法律の差異の理解を活用し、税務・法律に加え、会計・企業経理に関する豊富な知識と経験を活かし、シリコンバレーのベンチャーキャピタルにCFOとして参画した経験もある。独立後の現在はシリコンバレーを拠点に、シリコンバレーの日系コミュニティー、又は日本に起点を置き、アメリカで新規に活動を展開する企業を支援する。また、アメリカにて活動拠点を持つ企業の税務・会計・経理など、会社経営で大切な事務 処理を「ワン・ストップ・サービス」で提供できる便利なサービスも展開中。


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