Scrum Ventures General Partner
宮田 拓弥 さん
シリコンバレーと日本をどう結ぶのか? 2016年6月17日

昨年4月下旬から、歴代の現役首相として初めてシリコンバレーを訪問した安倍首相。4月30日のスタンフォード大学での講演では「日米架け橋プロジェクト」を発表。5年で200社を選抜しシリコンバレーに送り込む構想を発表した。世界的に見ても起業家とVC(投資家)が多数集まるこのシリコンバレーで自ら、SCRUM VENTURESを立ち上げ現在40社ほどに投資を行っている日本人投資家に話を伺った。
起業を考えている方、VCのビジネスに興味のある方の次のステップになるきっかけになれば嬉しい。

なぜ投資家(VC)の世界に入られましたか?起業されたきっかけは?

1997年に日本の大学を卒業して最初はソフトエンジニアの会社で働きました。東京での採用でしたが勤務地自体は、アメリカやオーストラリアと様々な国で働く経験ができました。大学時代は半導体の研究に没頭しており、業界の多くの人は、起業家精神が強く、自分も自然に独立を考えていたのかもしれません。起業のきっかけとしては、正直そんなにこだわってはいなかったのですが、学生時代に時代の流れであるハードからソフトの波が世界的に来ているのを肌で感じたことです。やはりシリコンバレーは、VCの世界の中心です。今の会社を40歳で立ち上げたのですが、自分が若かった頃に出資をしてもらいながら起業・売却を経験していたので、今度は、自分が若い人たちにギブバックしてあげたいという気持ちが強かったのだと思います。

アーリー・ステージの投資に絞られている理由は?

最初に私が起業したのが1999年だったのですが、当時と今の一番の違いは、誰でも簡単に、ビジョンとやる気さえあれば会社が作れてしまうというところ。現在はソフトもサーバーもほぼ無料に近い形で手に入るので、初期費用が格段に安く済みます。そういった意味では、昔よりも多くの会社が設立されており、その中から将来有望な会社を見つけるのは容易なことではありません。逆に言うと、この一番難しいアーリー・ステージの投資こそが、今までの自分の知識や起業経験などを生かせると感じました。

現在eコマース、ヘルスケア、エンタテイメント、SaaS、教育、IoTなど40社ほどに投資をされていますが、投資企業の選定に関してのポリシーは?

一つ目は、「世の中に出てくる会社を全部見よう」ということです。今はオンラインの時代なので、毎日簡単に世界中の起業した会社を調べることができます。その中でチームに分かれ、面白くて一気に革命が起きそうな分野を探しながら投資企業の選定をしております。キーワードは「実現可能な大きな変化」かも知れません。

二つ目は、「人・チーム」です。これはよく言われることですが、本当にこの人たちが大きな変化を起こせるのか?という視点で見ます。我々が投資する会社は、 ドクタークラスの方が長年その分野で研究をしているところが多いのも特徴です。

例をあげますと、Scrum Venturesが投資している会社で Spire (www.spire.io)という会社(呼吸を測定し、ストレス状態や心の状態を把握し、生産性の向上を図ることのできるウェアラブルデバイスを開発、販売する企業)があるのですが、創業者のニーマ氏はスタンフォード大学で長年その分野を研究しており、私達は、そのウェアラブルデバイスという「変化」の流れにも沿っている点に注目し投資を決めています。

ずばり投資の魅力は何ですか?

人類の進化に関われることだと思います。そして、自分が社長になってしまうとその特定分野でのことしかできませんが、 VCであれば多くの業種の方、たくさんの方々と関われるのも魅力の一つだと思います。

将来的にScrum Venturesをどういった会社にされたいですか?

VCという立場上、基本的にはスタートアップの会社を支援する側に回っているのですが、将来的には、インキュベーションと言われますが、社内の中からも新しい 分野のスタートアップの会社を生み出していければよいかなと思っています。

宮田さんの野望は?

学生時代は、テクノロジー・イノベーションの研究に没頭していたので将来的には科学者になって、ノーベル賞を受賞?!などと考えておりましたが、世界を変えていきたいですね。

日本・米国で複数の起業を経験されていると思いますが、今後起業を考えている方にアドバイスをお願いします。

一日でも早くやること」「自分でないといけないとうジャンルを見つける事」この2つがとても重要だと思います。先ほども言いましたが、今は昔と比較して、お金を掛けずに簡単に会社を設立することができます。つまりリスクを取らなくても大丈夫なわけです。もちろん今勤めている会社を辞めなさいとうことでもありません。リスクを抑えるためには、一つの会社で働きながら、その傍らでサービスを始めてみたりとか、軌道に乗っていけば会社を作ってみたりするのもよいと思います。その反面、起業の難しい点は、自分が思いつたサービスは既に多くの方が始めているという事。思い付きではなく「自分でないとできないジャンルは何?」ということをしっかりと自己分析し、自分の得意分野で勝負することがよいと思います。大変なことも沢山あるので「自分が好きな事」というのが重要ですね。

休日の過ごし方・家族サービスなどは?

息子が二人いますので、週末に子供達とキャッチボールをして遊ぶのが一番楽しいですね。二人とも地元のリトルリーグに入っていますのでよく応援に行ったりしています。家族で一緒に過ごす時間がやはり一番の幸せでしょうか。最近は時間を見つけてゴルフも行くようにしていますね。先日もDigital Garageとの共催ゴルフコンペ「DZ Cup」も実施したんですよ。今回参加できなかった方は、次回是非!

影響された本・お好きな本がありましたら教えて下さい。

マット・デイモン主演で映画化されているのですが「The Martian」という本を最近読みました。シリコンバレーに住んでいるエンジニアが書いた本なのですが「火星に行ける時代が来て、実際に火星で4年間生活をするストーリー」です。我々VCは一歩先の変化に投資をするのですが、この本は、火星に住むという更に先の時代を想像してものすごくリアルに描かれているのに興奮しましたね。是非、私もいつか火星に行きたいと思いました。

日本での学生時代はどのように過ごされましたか?

学生の頃からラグビーをやっていました。日本人にしては背も高い方でロックという一番体の大きい人間がやるポジションでした。ただ背が高かったからラグビーをやっていただけかも知れません。(笑)

渡米されたきっかけは?

2002年にUSC(南カリフォルニア大学)の大学教授が立ち上げた会社に参加したのがきっかけでした。その後会社は2005年にGoogleに売却できたのでとてもラッキーでした。完全にアメリカに移住したのは2011年です。今では月に1度は日本と米国を往復しています。

インタビューをしながら宮田さんの起業家、投資家としての熱い思いが伝わってきた。「決して楽な仕事ではありませんよ」と最後に呟いた宮田さんだが、自分がやりたい仕事だから厳しくても続けられるとも語った。 シリコンバレーで活躍する数少ない日本人投資家の一人、宮田さんに、是非頑張って頂きたい。

宮田 拓弥 (Tak Miyata)

1972年、神奈川県生まれ。1997年早稲田大学大学院理工学研究科薄膜材料工学修了、同年にはロス・ペロー率いるElectronic Data Systems(EDS)に入社。26歳で起業を決意。1999年には最初の起業を経験する。2009年ミクシィのアライアンス担当役員に就任し、Mixi America CEOを務める。