米国宝酒造社長

伊藤 康二 さん

圧倒された日本酒の魅力


2017年6月16日
学生時代は食品の研究をしていまして、特に魚に含まれるDHAが人体にどんな影響を及ぼすかといったことをテーマにしていた関係もあり、将来は食品会社に勤務したいと思っていました。1996年当時、宝酒造は「カルシウムパーラー」などの健康飲料を取り扱っていた時代で、「食と健康」に携わりたい思いで入社しましたので、「日本酒」に対して特に思い入れはありませんでした。
入社後、大津市の酒類研究所に配属となり、1年間麹の研究をしました。そしてそれから神戸市の灘工場、現在の「白壁蔵」に3年間杜氏とともに酒蔵に住み込み酒造りに没頭しました。
酒の原料は「水」「米」「麹」と3つだけでとてもシンプルなんですが、米の磨き方、麹の造り方、発酵具合などによって味わいが全く違ってくるんですね。そして60歳を超えた杜氏の方が夜も寝ずに発酵具合を見極めるなど、ひとつひとつ丁寧に職人の勘に従い作り上げて行く。その奥深さ、そしてその様に非常に圧倒され、日本酒の魅力にのめり込んでいきました。

杜氏の勘を数値で管理
そして2000年から京都の伏見工場で8年間、清酒の製造や品質管理に携わりました。以前の酒造りは杜氏との共同作業でしたが、高齢化もあり杜氏の人数が減少しています。そこでその杜氏に宿っている「技能」を伝承して安定した品質を保つために、データを数値化していきました。
例えば、杜氏は麹造りの過程で「栗の香り」を見つけ出し、麹の出来上がりの判断基準とします。しかし一体他の人間にこの「栗の香り」が嗅ぎ分けられるのか?その成分は何であるのか?と言った具合です。その「栗の香り」を数値化します。また、米は水に漬けると周りから水を吸っていき、真ん中にちょうど吸わないところが出て来るんです。それを「目玉」と言うのですが、その目玉の大きさを見ながら、水から取り出しその水分量がいくらであるかを数値化します。
このようにこれまで杜氏が長年の経験で培ってきた技術や勘を数値化することで、杜氏の技術を伝承しつつ、社員でも同じ酒質を醸し出せるようにすることを実践してきました。

中国のマーケット
その後、中国北京の宝酒造食品有限公司に7年間配属となりましたが、中国で日本酒を販売しているのは、ほとんどが日系のスーパーやコンビニエンスストアで、地元のスーパーには置いていないんです。それは日本酒が中国市場に浸透していないということで、言い換えれば日本食がまだまだ普及していないということです。中国の食文化は日本食と似ているんですね。同じような食材を使っているし、箸を使って食べる。そして広東料理、四川料理、東北料理など自国の料理だけでもバラエティーに富んでいるので、日本食が広がりにくい環境だと思います。
また、日本食は高級だということもあります。中国の酒の価格を見るとよく分かるのですが、北京で一般的に飲まれている白酒(ばいじゅ)は日本円に換算すると大体1本300円です。アルコール度数は約50度。中国のビールは1本約80円。日本酒は600円くらいですから白酒の2倍になり敷居が高いわけです。北京や上海、広州のような大都市では富裕層が多く、日本食は人気がありますが、地方へ行くと日本食を食べる機会は非常に少なく、まだまだこれからだと思います。


アメリカのマーケット
その一方で、アメリカでの日本食の定着度には驚きました。アメリカは肉料理が主体なので、中国とは違い、日本食を「ヘルシー」なものとしてすぐに受け入れたことが理由ではないでしょうか。日系のスーパーだけに留まらず、アジア系、アメリカ系のスーパーに日本酒が置かれているのをみて嬉しく感じました。
しかし西海岸のカリフォルニアや、東海岸のニューヨークは日本人が多いこともあり日本酒は普及していますが、内陸の中西部ではこれからもっと成長が見込めると思います。最近テキサス州に日系企業が進出していることもあり、それを追い風としたいと思っています。そして企業ごとではなく「日本酒」という大きなひとつの括りとして、みんなで盛り上げていけたらと思っています。

日本酒の会

中国北京では「日本酒の会」と称して会員を募り、週末に日本食とのペアリングを紹介していました。実際に食べて飲んでいただくと、初めての方でも「こんなに美味しいのか!」と喜んでいただけました。これが本当に大切なことだと思います。サンフランシスコでもこのような形で今まで日本酒を飲んだことがない方々に広く楽しんでいただけるような機会を作っていきたいと考えています。

TAKARA SAKE USA Inc.
510.540.8250
www.takarasake.com
TAKARA SAKE USA Inc.708 Addsion St., Berkeley, CA 94710