第32回:一般大学の音楽プログラムについて <ハーバード大学編>

 みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。

 今回は、ハーバード大学の音楽プログラムについてお話しようと思います。

Havard University https://2u.com/partners/harvard-university/

 ハーバードには、New England Conservatory(NEC)/Berklee College of MusicとのDual Degree Program という、5年間のプログラムがあります。これは、ハーバード大学の4年間で Bachelor of Arts (A.B.)を、その後の1年間で NEC もしくは Berklee の Master of Music (M.M.) の学位を取得するというプログラムです。すなわち、通常2年かかる、Master of Music (M.M.)のプログラムを1年で習得するというものです。ただ、ご想像に難くないように、このプログラムは非常に狭き門です。過去数年の合格者を見てみると、George Li (2015 年チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で銀メダル。アメリカの若手ピアニストとして活躍)や、Stella Chen (2020 年 Avery Fisher Career Grant, 2019 年 クィーン・エリザベス国際コンクール・バイオリン部門で優勝) など、そうそうたる顔ぶれです。このプログラムの合格者は毎年 2~3人、多くても5人以下だそうです。これは、Juilliard/Columbia Exchange Program (音楽教育のススメ第 29 回に詳しく記載)よりも、低い合格率です。また、ジュリアード/コロンビア大学の同様のダブル・メジャー・プログラムが、コロンビア大学を3年で卒業、その後ジュリアードで、2年間のM.M.なのに対し、ハーバード/NEC または Berkleeでは、ハーバード大学を4年で卒業、その後にNEC ないしは Berkleeで、1年間でM.M.を取得、と、ややアカデミックの方に比重を置いたプログラムとなっています。これまで、私の周りでも、このプログラムに挑戦し、ハーバード大学に合格、そして NEC にも合格、だけれども Dual Degree には受からなかった、という人が何人もいます。

Harvard University
John Knowles Paine Concert Hall
https://music.fas.harvard.edu/painehall.shtml

 ただしかし、Dual Program に受からなかったといって、音楽とアカデミック、どちらも諦める必要はなく、ハーバード大学に単一で入学した後も、NEC で個人レッスンを受けたりすることは可能です。またハーバード大学にもそれなりの音楽プログラムが用意されており、オーケストラ、室内楽、コーラルなどのパフォーマンスの他、音楽学、作曲、音楽史、民族音楽、セオリー(楽典)などを学ぶことができます。音楽の分野においても、ハーバード大学では、実際の演奏よりは、学問的な要素に重きを置いているように感じます。このことは、ハーバード大学で音楽の教鞭を取っている教授陣の多くが、著書を手がけていることからも伺えます。

 ハーバードの音楽プログラムで一際目を引くのが、学生の質の高さです。これは、全員ハーバードの学生ですので、当たり前と言えば当たり前なのですが、音楽の分野においても、全米もしくは世界各国のそれぞれの地域で、高校生の時にスター・プレイヤーだった学生たちが集まっている印象を受けます。SF Bay Area で言うと、例えば SFSYO (サンフランシスコ・シンフォニー・ユースオーケストラ)の各楽器のプリンシパルや、コンサートマスター、アシスタント・コンサートマスターなどです。頭の良い人は、音楽もできる人が多いと改めて認識させられます。もしこれを読んでいる読者のみなさんやそのお子さんが、勉強は学年トップクラス、音楽でも抜きん出た才能があるのであれば、ハーバード大学で勉強と音楽の両立を目指すのもいいかもしれませんね!

Harvard University
https://www.harvard.edu/