第35回 :アメリカ・夏の音楽祭 <前編>

 みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。そろそろ夏休みも終わり、新学期が始まるシーズンとなりましたが、みなさんはどのような夏をお過ごしになりましたか。コロナの影響で、外出や遠出を控えるご家族も少なくなかったと思いますが、ご家族で旅行に行ったり、日本へ里帰りしたり、オンラインや対面で、音楽やスポーツ、勉強のキャンプなどに参加したり、それぞれに充実した夏を過ごされた方も多いと思います。今回は、夏の音楽祭・ミュージックスクールについて、ご紹介しようと思います。毎年、全米各地では、夏にはさまざまな音楽祭が行われています。クラシックに限らず、ジャズ、ポップスなど、規模も形態もいろいろです。昨年はコロナの影響でイベントが中止になったところも数多くありましたが、今年は小規模ながら、ライブコンサートや対面レッスン、コーチングなどを行ったところが多く見られました。クラシック音楽では、オーケストラ編成を含む音楽祭、及びミュージックスクールは、参加できる年齢が14〜15 歳以上のところが多いですが、ソロや室内楽(chamber music)のキャンプでは、それ以下の年齢でも参加できるところもあります。
 まずは、アメリカの著名なMusic Festival and School からご紹介していきましょう。

❶ Tanglewood Music Center
< https://www.bso.org/Home >

 ボストン・シンフォニーがリードするこの音楽祭は、1934 年にニューヨーク・フィルのメンバーたちが集まってアウトドアコンサートを行ったのが始まりと言われる。それから90 年近くの時を経て、現在は、マサチューセッツのLenox で行われており、1986 年、若干14 歳だった、バイオリニスト五嶋みどりが、ボストン・シンフォニーと共演した際、2度もバイオリンの弦が切れるというアクシデントに見舞われながらも、立派に演奏を終えた逸話は、「タングルウッドの奇跡」としてアメリカの小学校の教科書にも掲載されたほど有名。


❷ Aspen Music Festival and School
< https://www.aspenmusicfestival.com >

 アスペン音楽祭は、コロラド州アスペンで毎年夏に行われている音楽祭で、1949 年に創設。国内外から招聘されたアーティストたちのコンサートと共に、若き音楽家たちの育成も行っており、オーディションで選抜された、主に音楽大学の学生、またはプレカレッジの生徒たちが8週間に渡りオーケストラやソロ、室内楽など数多くのコンサートで演奏する。

❸ Sarasota Music Festival 
< https://www.sarasotaorchestra.org/festival >

 6月にフロリダで、三週間行われるサラソタ音楽祭は、音楽祭の規模としては、ややこじんまりしており、約30 人のアーティストに対し、若き音楽家たちは約60 名で、アーティストたちと若き音楽家たちのコラボ・ステージも数多く見られる。






Music Academy of the West
< https://www.musicacademy.org >

 カリフォルニア州サンタ・バーバラで行われているこの音楽祭は、1947 年に創設、主に若き音楽家たちの育成に重点が置かれている。すべてがフル・スカラシップで賄われ、オーケストラ、室内楽、ソロコンサート、オペラなどのパフォーマンスの他、マスタークラスやコンペティションも行われる。Keston MAX Fellow に選ばれると、パフォーマンスを始めとする、様々な機会が与えられる。

❺ Music@Menlo Chamber Music Festival and Institute
< https://musicatmenlo.org >

 SF Bay Area, Menlo Park-Athertonで7月下旬〜8月にかけて三週間行われている、室内楽の音楽祭。Instituteでは、10歳から19歳までのYoung Performers Program(YP)と、20歳から30歳までのInternational Program(IP)の二つのカテゴリーがあり、それぞれ事前にオーディションで選抜される。2003年にチェリスト David Finckel氏と、ピアニストWu Han氏によって創設され、フェスティバル・コンサート、IPによるプレリュード・パフォーマンス、YPによるヤング・パフォーマーズ・コンサートの3世代によるコンサートが楽しめる。(次号につづく)