第2回 :ピアノ vs 電子ピアノ どこが違うの?

みなさま、こんにちは。先月からこのコラムを担当させていただくことになりました、有座です。先月号の「子供の音楽のおけいこはいつから始めたらいい?」はお読みいただけましたか。J weeklyのウェブサイトでもバックナンバーが読めるようですので、見逃した方はぜひご覧になってくださいね。

さて、今回は、ピアノ(ここでいうピアノとはアコースティック(生)ピアノのことです) と電子ピアノの違いについて、教育の視点からお話したいと思います。電子ピアノはピアノに比べ、場所を取らず、また値段も安価で、夜間など音が気になる場合にはヘッドホンやイヤホンで楽しむことができて便利ですね。最近では、機種やデザインも豊富で、大人の方が自分で楽しむための楽器としては最適といえるでしょう。でも、実は、電子ピアノはこれからピアノを学ぼうとする、お子さんのための家庭学習用の楽器としては、全く不向きなのです。ピアノは弾く人によって多彩な音色を作り出すことができます。大きい音、小さい音だけでなく、楽しい音、明るい音、悲しい音や深い音などさまざまな表現力を持っています。ピアノのレッスンでは、ただ音符を正確に弾くだけでなく、美しい音、豊かな音でピアノが演奏できるように指導しています。お子さんはただ鍵盤を指で弾いているだけでなく、実際に出てきた音も聞きながら練習しているのです。綺麗な手の形で弾いたら美しい音で弾けた、指の動きに気をつけて弾いたらレガート(音をつなげて弾くこと)で弾けるようになった、という体験は、お子さんのピアノの上達に欠かせない大切な成長の過程です。音量しか変わらない電子ピアノでは、いくら練習しても、多彩な音色を奏でることはできません。 

私のところの教室に5歳でやってきたMちゃんは、半年たっても、なかなかレガート奏ができずに苦労していました。いつもレッスンの最後では、なんとか弾けるようになって帰っていくのですが、また一週間たつと、元の木阿弥で音をプツプツ切って弾いてしまうのです。そこで、お母様にご家庭の楽器を詳しく聞いてみると、ピアノ、と呼んでいたその楽器は実は電子ピアノでした。そこで、中古やレンタルでもよいので、ピアノを入手してください、とお願いしたところ、快く応じて下さり、ピアノがお家に届いてからわずか二回のレッスンで、綺麗なレガートが弾けるようになったのです。それからのMちゃんの上達ぶりは目を見張るものがありました。ピアノを弾くのが大好きになり、地元のコンクールで賞をもらったりしました。このように、お子さんの可能性は無限大です。ぜひご家庭では、よい楽器で音楽のおけいこができるように環境を整えていただけたらと思います。