第45回 :生命保険の受取人についてpart1

生命保険に加入する際、被保険者が亡くなった時のためにBeneficiary(保険金の受取人)を指定します。保険金の受取人は1名でも2名でも、またはそれ以上の人数を指定することもできます。

Primary beneficiaryを数名指定する場合は、全体を100%とし、それぞれ個人の受け取り比率を指定します。アメリカでは日本と違い、被保険者の配偶者または三親等以内の血族をBeneficiaryに設定しなければいけないというルールはありません。事実婚状態(内縁関係)のパートナーや恋人、親しい友人、ビジネスパートナー、慈善寄付団体など、第三者でも指定できます。被保険者に配偶者がいる場合は、その配偶者をBeneficiaryとして設定する方が多く、シングルの方は親や兄弟姉妹を受取人として設定される方が多いです。Primary beneficiary として指定された方が突然亡くなってしまうという事も実際には起こりえます。そのようなケースに備え、Contingent beneficiaryも併せて指定されておかれることをお勧めします。Contingent beneficiaryとは、Primary beneficiaryが保険金給付を受けることができなくなった場合に、次いで給付を受け取ることができる人のことです。このContingent beneficiaryも何名でも指定できます。

実際には、配偶者1名だけをBeneficiaryとして指定されている保険契約者も少なくありません。稀なケースだと思いますが、もし被保険者とそのたった一人のBeneficiaryが同時に事故で亡くなってしまうという事を考えた場合、Contingent beneficiaryを指定しておかれると、スムーズに保険金請求の手続きが進みます。

被保険者に子供がいる場合は子供をBeneficiaryとして指定することも可能で、実際にそのようにして加入されている方も多いと思います。

ただし、18歳未満の未成年(州によっては21歳未満)の子供をBeneficiaryとして設定する場合、指定された子供は、万が一被保険者が亡くなったとしても、直接保険金を受け取ることはできません。未成年の子供が受け取るためには、州が子供のLegal guardianを選任する必要がありますが、それには時間と費用がかかります。また、Legal guardianとなった人は子供のお金を管理する権利が発生するため、被保険者の希望と必ずしも一致しないかもしれません。

この状況を回避するための簡単な方法として、Uniform Transfers to Minors Act(以下UTMA)の口座を開設し、管理人を指定するという方法があります。子供が州から未成年者とみなされなくなるまで、被保険者の資産の管理者となるCustodianを指定します。この口座に入れられたお金はCustodianの了承無しでは、子供は勝手に使用することはできませんが、口座に入っているお金は全て子供のものという扱いになりますので、子供は未成年であっても死亡保険金を確実に受け取ることができます。ただし子供の大学進学時にUTMAの口座に多額のお金が残っている場合は、子供に財産があるとみなされ、ファイナンシャルエイドを減らしてしまう可能性もありますので注意が必要です。

もう一つの選択肢は、未成年者でも生命保険金を受け取ることができるようトラスト(Trust)を利用することです。トラストを利用することは生命保険のみならず、預金、不動産、退職金などの被保険者の試算を望み通りに分配することを確実にし、亡くなった後に行われる長い裁判手続きを回避することができます。生命保険契約の場合、未成年の子供の名前の代わりにTrustとTrusteeをBeneficiaryとして指定することができます。

しかしトラストについては資格のある弁護士さんの助けも必要となり、費用も決して安くはありません。これらの方法では敷居が高く、そこまでの手続きを予定されていないのであれば、未成年の子供をBeneficiaryに設定することは避けた方が良いでしょう。生命保険は被保険者が亡くなった瞬間から、残された大切な方の人生を守ります。亡くなった被保険者に住宅ローン、自動車ローン、学生ローン、その他ビジネス上で契約していたローンなどが残っていた場合、ご家族が全てその債務を引き継がないといけなくなるかもしれません。

また、被保険者が生前に家族に仕送りをしていた等という場合にも、その方たちの今後の暮らしに経済的な影響を与えるかもしれません。それらを考慮した上で生命保険に加入するようにして下さい。

第46回 :生命保険の受取人についてpart2