第13回 アメリカの音楽大学入試・実技試験について(前編)

みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。昨秋から「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。

今回は、音楽をメジャー(専攻)にする場合のプレ・スクリーニング(予備選考)とライブ・オーディション(実技試験)についてお話ししましょう。高校のシニアの皆さんは、現在、大学入試の真っ最中ですね。アメリカの大学入試では、GPA の他、SAT/ACT テストスコア、レコメンデーションレター(推薦状)、課外活動、エッセイなど、自分自身についての多岐に渡る情報や意思をしっかり提示しなくてはなりませんので、準備が大変です。音楽を専攻する場合には更に、器楽や歌の演奏を目指す人は、自分の演奏ビデオを、作曲を目指す人は、作品と音源を、アプリケーション(入学願書)と共に提出しなくてはなりません。プレ・スクリーニングとは、大学のアプリケーション提出時に添付する、自分の演奏ビデオのことです。大学側は、そのビデオを見て、その生徒をライブ・オーディション(実技試験)に招くかどうかの判断をします。それはある程度、その生徒の実力を見るためと、あまりに稚拙な演奏しかできない生徒を予め振り落とすためです。プレ・スクリーニングの替わりに、実技試験が、一次・二次・三次と別れている音楽大学もあります。プレ・スクリーニングを送ったら、ライブ・オーディションに行く前に不合格をもらった、という話も時折耳にしますので、プレ・スクリーニングだからといって気を抜かずに、自分のベストの演奏の録音・録画ビデオを良い音質・画質で収録することが大切です。一般の家庭用ビデオ・カムコーダーですと、どんなに上位の機種でも、大きい音は小さく、小さい音は大きく録音されてしまいますので、演奏を録音するには、不向きと言えます。音は、良いマイクロフォンを使って別立てで録る方がよいでしょう。私のスタジオでも、10 月・11 月は音大のプレ・スクリーニングを始め、各種コンペティション、オーディションのために、レコーディングに訪れる生徒・学生さんで賑わっています。

そして、無事にプレ・スクリーニングを通過し、次のステップに進めた場合、選択肢がいくつかあります。まず、実際にその大学へ出向いて行って、試験官の前で演奏をする、ライブ・オーディションです。この場合、その大学へ行くための旅費や宿泊費などが掛かります。日帰りできない距離の場合は、学校を休んで行かなくてはなりません。最難関の音大では、ライブ・オーディションしか受け付けていない大学もありますから、その場合は、指定された日程の中から自分の受けたい日時を選んで申し込み、受験します。ライブ・オーディションは主に1月~3 月の寒い時期に行われますので、東海岸など、天候によっては雪などのために、飛行機が欠航する場合もありますから、注意が必要です。万が一、飛行機が欠航しても慌てないように、余裕を持って計画を立てましょう。(次号に続く)