ナパワイン、4%の威力

ワインショップで日本のお客様によく聞かれるのは、「ナパワインありますか?」こう聞かれる時はいつも「ナパワイン」の意味するところをお客様に確認します。というのも、 カリフォルニアワインとナパバレー産ワインを同義語のように使っている人がたくさんいるから。

日本の面積とほぼ同じ面積を持つカリフォルニア州には、たくさんのワイン産地があり、 AVA(American Viticultural Area)と呼ばれる米国法で認定されたアメリカ葡萄栽培地域は現在139もあります。Napa Valley AVAはその中の一つで、その中に16のサブAVAがあり、生産量でいうと、カリフォルニア州全体のワイン用葡萄生産量のうちの、なんとわずか4%を占めているにすぎません。

にもかかわらず、「カリフォルニアワインと言えばナパバレー」というイメージを世界中の多くの人に与えられているのは、ナパバレーがカリフォルニアワインの歴史で果たしてきた大きな役割と、ブランディング戦略による相乗効果。いまやNapa Valleyが表記されているワイン(=85%以上Napa Valley AVA産の葡萄を使っているワイン)は、他地域産のAVAワインよりも格段に高価格で市場に出回っています。

Napa Valleyの功績は誰もが認める一方、カリフォルニアワインのイメージがナパバレーに引っ張られすぎて、他のAVA産のワインの魅力、カリフォルニアワインの多様な魅力がまだまだ一般消費者に根付いていないことはカリフォルニアワインを取り扱う私たちにとっての課題。また、先日参加した米国最大のワイン業界シンポジウムUnifiedの分科会でも、AVAを巡る課題についてディスカッションがあり、AVAの数が増え続けていて、消費者にとっては細分化しすぎて分かりにくくなってしまっている現状があらためて問題提起されました。

AVAは産地の表記であって、品質の証明とイコールではないということを念頭に置いて、一つのAVAに縛られすぎずに、カリフォルニア中にたくさんある素晴らしい産地のワインをいろいろと楽しんでもらえるように、消費者フレンドリーな情報をお伝えしていきたいと思います。

(本記事に掲載の数字は、Unified SymposiumとNapa Valley Vintnersの資料から抜粋し掲載しました)