日本語補習校の選び方
アメリカでの学びは、子どもの宝となる
海外で学び始める子どもたちは、慣れない環境で過ごすだけでなく、英語が分からなかったり、学習の仕方が日本と違ったりなどの理由で最初は苦労します。涙する親子も少なくありません。しかし、心配ごとだけに目を向けずに、これからの数年間が子どもの将来に重要な意味を持っていることを考慮すると、ここでの毎日の生活が素晴らしいものであることが分かります。日本がグローバル化へ向け加速する中、英語や、多様性に富んだものの見方、自分とは異なる人を受け入れる心の広さなどを身につけられるアメリカでの生活は、子どもの宝となる可能性を大きく秘めています。
日本語で学べる教育機関の選択肢
海外の日本語の教育機関には、日本人学校(現地校に通わない)と日本語補習校(現地校にも通う)があります。アメリカには日本人学校は数校しかありません。英語で学ぶ現地校にも通って欲しいと思っている親御さんが多いからです。ベイエリアには学齢期(小・中)対象の日本人学校はありませんので、平日に現地校に通い、放課後や週末に日本語補習校にも通うことになります。このエリアの日本語補習校には、登校日としては平日の放課後に数日通う学校と土曜に通う学校があり、対象としては幼稚園児、小学生、中学生、高校生を受け入れる学校があります。また、補習校以外でも、少人数の教室や、学齢期に満たないお子さんのために平日朝からやっている幼稚園や教室などもあります。もしも近くに学校がない場合は、海外子女向けの通信講座を使って親子で学ぶことになるでしょう。
お子さんに合った学校の選び方
まず、確認したいのは、授業がある曜日はいつか日本の教科書を使っているか、何科目学習するか、年度は4月から3月か、教室で子どもたちは日本語を話しているか、どんな行事をしているか、日本語の本をたくさん借りられるか、休み時間に外で遊んでいるか、栽培や実験をしているかなどです。一番大切なのは保護者が共感できる教育理念をその学校が持っているか否かでしょう。的を絞ったら、通える範囲内の候補の学校すべてに足を運びましょう。見学する際には、授業や教室の様子だけでなく、どんな表情で子どもたちが勉強しているのか、先生がどのように子どもたちと接しているのかも見て下さい。その学校がお子さんに合っているかどうかが分かると思います。
いいスタートを
現地校に集中させるために、しばらく期間を置いてから日本語での学びをスタートさせる人が稀にいますが、お勧めしません。それは、現地校だけに通っていると、英語での学習なので自分はできない子になってしまったと感じたり、自分の居場所を作れなかったりして精神的に不安定になることがあるからです。また、その期間の日本語の学習がすっかり抜けてしまい、後日それを取り戻すのが困難になるケースもあるからです。 いいスタートを切ることで、アメリカでの生活が子どもの最高の宝となりますように。
日本とアメリカの英語教育の違い
帰国子女入試のエッセイを指導している時に一番感じることは、英文法の知識があいまいな生徒が多いということです。現地校で学習に困らないほど英語力をつけているにもかかわらず、日本の英語教育についていかれないというケースも多く見かけます。この背景にはアメリカと日本の学校の全く異なった英語へのアプローチがあります。
アメリカの学校ではディスカッション形式の授業が多く、はっきりと自分の意見を発言することを求められます。「先生の話をしっかりと聞く」日本の授業とは正反対と言ってもいいでしょう。作文やエッセイにもその姿勢は反映され、現地校では自分の考えを強くアピールできる書き方を重点的に指導します。そのため、文法や構文の誤りについてはあまり指導されません。英語が母国語でない子供たちは自分の英語力で自分の考えをのびのびと表現できるようになりますが、帰国子女入試の英文エッセイは文法・語彙・構成・流れ・内容と採点が細分化されているために、内容や構成のみで点数を伸ばすことはできません。中でも文法は他の要素よりも大きな配点となっています。
ではなぜ日本の英語教育は文法中心なのでしょうか。それは、日本で英語を学ぶ生徒たちは日本語を軸にして英語を学ばなければならないため、日本語と英語の対比に基づき英語のカリキュラムが組まれているからです。文法重視の為に英会話力がつかないという欠点はありますが、日本語と英語の両言語を高度に使えるようになるためにはこのような言語の比較による教育が大切なのです。逆に、先にコミュニケーション能力を身に着けた帰国子女は、後から二つの言語の違いを学ぶことになります。このような全く教育方針の異なる二つの国の英語教育を受けなければならない子供たちには大きな負担がありますが、帰国後は、第一言語である日本語の土台の上に第二言語である英語があるということを踏まえて学習していく必要があります。
結局のところ、日本語と英語は言語的に構造が違いすぎるためまずは文法を中心に学ばなければならないと言えるでしょう。英語と違い婉曲的な表現の多い日本語は日本の伝統文化で育まれた言葉だということ—それは五年間のニューヨークの現地校生活を終えて日本の高校に編入した当時、古典の授業で源氏物語の一節に心打たれた私の発見でもありました。真のバイリンガルとは言語のみではなく二つの文化の伝統を理解することでもあるのです。
帰国してから英語の授業に手こずった、思った程点数が上がらない、入試に失敗した、といったことがないよう、対策が必要です。
文責:Suzuki Launguage School 鈴木講師
email:[email protected]
web:suzuki-language.world.coocan.jp
学校の種類
■ 土曜日に授業がある補習校 (小・中・高など)
幼・平日放課後をアクティビティなどに活用できる。ただし週1回なので、学習の定着が難しい。日本語だけで話しているかの確認が必要。
■ 平日の午後週2日授業がある補習校 (幼・小・中)
週末、家族でアメリカ生活を楽しんだり、アクティビティに活用したりできる。週2日の登校なので、学習の定着が容易。家庭学習のペースもつかみやすい。
■ その他 – 教室・平日朝からの幼稚園など(幼・小・中など)
学校によって異なるが、少人数で学習できるところが多い。ただし、教室での子供同士の意見交換の機会が少なくなりがち。教科書を使っているか、日本語だけで話しているかの確認が必要。
■ 海外子女向け通信教育 (幼・小・中)
近くに通える学校がない場合の選択肢。ペースを保って学習し、添削も受けられる。幼児コースは、絵本とワーク。
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監修:三育学院