インピンジメント症候群について
肩のスポーツ障害で多いものでインピンジメント症候群というものがあります。腕を高く上げたり回したりする動作の多い野球やバレーボール、もしくは水泳などの競技をしている人で発症することがよくあります。
インピンジメントというのはRubbingとかCatchingといったような意味の言葉ですが、肩を動かす動作の中でローテーターカフの腱板や関節唇、嚢胞といった組織が骨と骨の間に挟まったりすることを繰り返すことで痛みや炎症が起こるようになります。
インピンジメント症候群には大きく2種類あって、External ImpingementとInternal Impingementがあります。上腕肩甲関節の外で起こるものと内部で起こるもので分類されています。External Impingementは肩峰下インピンジメント症候群とも呼ばれているものです。肩峰という肩甲骨の一部(鎖骨の先につながっている部分)と上腕骨の間にあるスペースを肩峰下スペースと呼ぶのですが、そこには棘上筋の腱板、上腕二頭筋の長頭の腱、肩峰下嚢胞といった組織が存在しています。腕を上にあげる動作をする時に、何らかの理由で肩峰下スペースが狭くなってこれらの組織が骨と骨の間に挟まれることによって痛みや炎症が起こります。また肩峰の下側の形状は生まれつき真っ直ぐの人、丸くなっている人、またフックの様になっている人と、大きく分類すると3つの種類があるのですが、生まれつきフックの様な形状の肩峰を持っている人は構造上どうしてもインピンジメント症候群を発症しやすくなります。また加齢による骨の変形で肩峰下スペースが狭くなる場合もあります。
Internal Impingementにはさらに前上方と後上方の2種類がありますが、前上方のタイプは珍しくほとんどは後上方になります。これは上腕骨骨頭の一部と肩甲骨の関節窩の一部の間で、特に投球動作などで必要な肩の外転と外旋を伴う動きを行ったときに関節唇や棘上筋、棘下筋の腱板を挟んでしまうことで起こります。
インピンジメント症候群は適切な治療をせずにそのままにしておくとローテーターカフの腱板の断裂や関節唇の損傷、腱の石灰化、肩峰下嚢胞炎といったものを引き起こしより深刻な状態になっていきます。治療の初期はまず炎症や痛みを抑えることが大切ですが、それと並行してそもそもインピンジメントを引き起こしている原因を探って適切な介入を行う必要があります。生まれつきの骨の形はともかく、普段の姿勢であったり、背骨、特に胸椎周りの可動性や、肩甲骨の可動性、上腕肩甲関節そのものの安定性、またスポーツをしている場合は投球の動作のフォームなどを見直すことが重要になります。