生徒作文コーナー:「ゴミ屋しきの家」

サンフランシスコ日本語補習校 幼小部サンノゼ校 小学部 4年 向嶋 晃司(むこうじま おうじ)さんの作品をご紹介します。

「ゴミ屋しきの家」

サンフランシスコ日本語補習校 幼小部サンノゼ校
小学部 4年 向嶋 晃司(むこうじま おうじ)

 「きったねー。」

 これが、おじいちゃんの家に行った時の感想だ。

 今年、3年ぶりに日本に行くことができた。昨年、おばあちゃんが亡くなった時、パンデミックでお葬式にでられなかったこともあって、この夏の日本行きは僕にとって特別なものだった。

 おじいちゃんはお坊さんでお寺に住んでいるので、おばあちゃんのお参りをしに、お寺に行った。

「おかえり!大きくなったなー!」

玄関先でおじいちゃんが満面の笑みで迎えてくれた。僕は久しぶりにおじいちゃんに会って、とってもうれしかった。

 だけど、家の中に入ると部屋の様子がちがうのにおどろいた。それは、おばあちゃんが亡くなったことで、もともとそうじが苦手なおじいちゃんの部屋はゴミ屋しきになっていた。

 次の日、家族みんなで早速そうじに取りかかった。

 まずはじめに、本と新聞紙を片づけた。おじいちゃんは読書好きで、いろいろな本や新聞が部屋のいたるところに山積みにしてあり、足のふみ場がないほどひどかった。たくさんの本をどうしようかとおじいちゃんに聞くと、お寺の横にあるくらの中に運んでほしいと言った。くらは100年以上前からあり、古く一度も入ったことがなかったので、お父さんが、

「ゆうれいが出てくるかもよ。」

と言って僕たちを怖がらせた。くらの中に入ってみるとうす暗くて、本当にゆうれいが出そうだった。

 おじいちゃんの家にある本は500冊は超えていて、大きくて分厚い百科事典もあれば、むずかしそうな仏教の本や小説などがたくさんあった。僕には何一つとしておもしろそうな本はなかった。

 みんなで汗まみれになりながら、くらまで本をたくさん運んできれいにしていた。しかし次のしゅん間、

「きゃあ」

とお姉ちゃんがさけんだ。

 何かと思ったら、床に一匹のゴキブリが死んでいた。お姉ちゃんが本を持ち上げた時、ゴキブリの死がいが転がり落ちたみたいだ。大の虫嫌いのお姉ちゃんは、悲鳴を上げてどこかへ走り出して戻ってこなかった。

 くらの中ではゆうれい、家ではゴキブリにおびえながら、ひたすら本を運んだ。おじいちゃんのためと思えば、がんばれた。

 その日は約3時間かけて、大そうじをした。部屋とくらがきれいになって、おじいちゃんはすごく喜んでくれた。その日の夜、僕たちを近所のおいしい焼肉屋さんに連れて行ってくれた。

「たくさん食べなよ。今日はありがとう。やさしいまごをもって、じいじは幸せだ。」

と言って、僕たちをほめてくれた。

 その間、お姉ちゃんは一番働いたかのようにいっぱい食べていた。そんなお姉ちゃんを見て、みんな笑った。3年ぶりにおじいちゃんとの幸せな時間だった。

 日本の夏はとても暑かったけど、おじいちゃんのためにがんばれたことが一番の思い出になった。

 焼肉屋さんから出たら、空から、

「ありがとう。おつかれさま。また帰ってきてね。」

と、おばあちゃんが言ってくれたような気がして、もっとうれしくなった。お姉ちゃんと

「ばあばにまた会いたいね。」

と言って、月に向かって手を合わせた。