寝てるだけで儲かる時代 ~Teslaの自動運転ライドシェアネットワーク構想~

Teslaのライドシェアネットワーク構想

Teslaが自動運転によるライドシェアネットワークを構築するアイディアを明らかにし、話題を呼んでいる。4月3日のTwitterで、Teslaはインカメラを、自動運転モードで所有者不在で乗客を乗せている状況の車内監視に使う可能性について言及した。所有者が自動運転車を使っていない時間帯に、移動する人を無人で運ぶことにより所有者のために稼ぐ世界の実現を示唆し、UberやLyftを名指しして、同2社が恐れる完全自動運転×ライドシェアを実現することに意欲を見せた。完全自動運転機能が完成するタイミングでネットワークを立ち上げる予定という。イーロンマスク氏は、4月22日のカンファレンスコールでアイディアの詳細を以下のように発表した。

完全自動運転のスケジュール

Teslaは現存の車載設備(カメラ8台、超音波センサー12個、レーダー)のままソフトウェアのアップデートのみで完全自動運転を実現することを公言している。センサーとしてLidarを使わない同社のアプローチの有効性を裏付ける研究がコーネル大学から発表されるなど、同社の自動運転技術についてポジティブな材料も出てきている。

Teslaは、技術的に2020年の2Qからはドライバーの関与が必要ない完全自動運転車を実現する見込みであることを発表し、規制対応も含め2020年中の実用化することに自信をのぞかせている。ドライバーは完全自動運転と同時にローンチ予定のライドシェアネットワークに自らの車を提供することが可能になる。対象はModel3から始まり、Models及びModel xに拡張される予定である。

自動運転ライドシェアネットワークを構築する際の差別化

Teslaは競合との差別化として、データ、バッテリー、自動運転用のカスタムチップを挙げ、既に販売した車のオートパイロットモードのデータを収集している。2020年の末には完全自動運転の能力を備えた100万台以上の車を提供する予定であり、路上で実際に走行する車からのデータが、自動運転の精度及びライドシェアを行った際のマッチング精度向上に寄与し、競合との差別化になるという。

バッテリーの観点からは、現状300,000~500,000マイルの走行に対応しているバッテリーの寿命が、次年度には1,000,000マイルに到達するという。これにより、現存のライドシェアのコストを大幅に低減できるとする。

自動運転用のチップとしては、現状ではチップ容量の5%、多く見ても10%程度しか使っていないというNvidiaのチップより演算性能及びエネルギー効率が良く、高性能であると公言する内製化したチップが他社との差別化要因となる。

想定される採算性

Teslaは、コスト$0.18/マイル、年間90,000マイル(50%が空回送)の走行を仮定している。この想定で、$0.65/マイル の粗利を計上できるという。コスト$0.18/マイルは、Teslaが$2/マイルと見積もる現状のライドシェアのコストを大幅に下回る。

オーナーは年間$30,000の粗利を得ることができると試算しており、以上の算式で計算されるTesla車が想定する耐用年数である11年間の利益の割引現在価値は、$150,000~$250,000と見積もられるとのことである。同数値も前述のとおり空回送50%を想定しており、より効率的なオペレーション、新技術を開発するたびに数値は改善するという。

Teslaが超えるべき課題

一方で、Teslaの構想に疑問を呈する声もある。Teslaは電動化での競争を進める傍ら、Nvidiaとハードウェアで、グーグルとソフトウェアで、UberやLyftとライドシェアの領域で闘わなくてはならないからである。加えて、価格設定、保険、規制対応など考慮しなくてはならない事項について明確な回答が無い状況である。自動運転×ライドシェアの開発競争のトップを行くとみられるアルファベット傘下のウェイモ(Waymo)も、昨年12月にアリゾナ州フェニックスで配車サービスを開始しているが、いまだ緊急対応要員として人が同乗しており、業界的にも完全自動運転×ライドシェアの実現にはまだ時間がかかるとの見方もある。

いずれにせよ、イーロンマスク氏が、描く世界をどのように実現していくかに注目が集まる