就活・相続:米国法律のプロフェッショナルに聞く「終活を頭の隅っこに」

はじめに―終活を頭の隅っこに 

「終活」という言葉が日本では当たり前のように使われています。散る桜のごとく終わりを綺麗にして去りたいというのは、日本人が日本で生活するうえで、仏教的な生活感覚に根付いているのかもしれません。自分が「死ぬ」ということを考えたときに、恥ずかしくないようにしたい、周りに迷惑をかけないようにしたいと思われる方は少なくありません。弁護士も、人の終活に向けたいろいろな整理で人生にかかわることがあります。今ではファイナンシャルプランナーとか、カタカナ職業がたくさんでてきて、皆さんの財産に助言をするようになってきていますが、人間宵越しの銭は持てるかもしれませんが、死後お金を自由に使うことは、トラストなどの制度を使えば別ですが、なかなか思ったようにいかないものです。家族がいればいたで、どのように相続財産をわけるのか、家族がいなければどのように財産がなってしまうのか。お金があればあったで、どのように分ければよいのか、財産がなければ、必要ないのか、など、私も相談を受けるとそれはもう多種多様な入り口の悩みから存在します。人間そういうものです。

しかし、織田信長もよくわかっていましたが、人は必ず死ぬものであって、最後の相続税の手当をすれば、その人は法律的にも歴史になります。したがって、自分の意思に基づいて自分の財産をどのように差配するのか考えるのは生きているときになります。現在進行形の意思を表す計画をエステートプランニングと呼ぶわけです。人によって、老年になってからプランニングをすれば良いと考える人もいるでしょう。大病を患って危機感を持つ人もいるでしょう。その考える時機は人それぞれだと思います。

エステートプランニングとは

ここから昨年の記事を少しチューンアップしてみます。私がぐうたらしているわけではなく、重要であり、毎年、反復して考えるべき内容だからです。エステートというのは、相続財産という意味です。これは、誰かが財産を所有していて、その人の死後残された財産を指します。エステートプランニングは、自分で持っている財産を自分の死後、どのように分配するのか生きている間に計画しておくということです。「相続計画」とでもいいましょうか。死後に自分の親族が醜い争いをすることを避けるためにも、生きている間に計画しておこうというものです。配偶者や子供が発生すると、その家族を支えていくということが人間にとっては最重要課題になります。やはり子孫を残し、教育や考え方をバトンタッチしていくことで、全体の社会に貢献する一助になるわけですから、そのコアの家族を守っていくことが大事になります。そうすると、やはり配偶者や子が自分の生活における基礎的な要素になれば、エステートプランニングを考えるきっかけになります。未成年の子がいれば、なおさらです。親が他界してしまうと、それはかなりの不利益が生じるからです。私は様々な案件に携わってきた経験上、エステートプランニングを少しずつでも考え始める時期は、結婚、子供が生まれた時、そして、その子供が成人になった時、と考えます。家族関係が実際にはエステートプランニングを考える上でかなり大事な要素なので、若い夫婦であろうと、将来的にどのようなロードマップが想定できるか、法律的にも考えておくことは悪くありません。信頼できる弁護士であれば、気軽に聞いて、指針にしたら良いと思います。

具体的にまず何をしたら良いのか

さて、相続設計と言っても普通何をしてよいのかわかりませんね。そこで、ここでは、初動で何をするのか考えましょう。結局専門家である弁護士に相談するにしても、やらなくてはいけないことなので、自分で整理しておくと考える道筋ができます。やることは2つあります。一つは財産のリスト化、もう一つは、自分の死後、誰(人でなくても団体でも構いません)に最終的に財産を帰属させたいか、ということです。ということは、人(団体)のリスト化ということになります。財産のリストについては、あまりにも細かいものは必要ありませんが、不動産、銀行預金、金融商品、生命保険、大きな動産などを箇条書きにしてみましょう。さらに、思い出がある品などもリストをつくっておくと良いです。そして、リスト化したものを誰にどのように帰属(相続)させていきたいか、さらに人のリストをつくるということになります。この人のリスト化は、家族だけではなく、団体や友人など、自分が財産を渡したいという人はすべて書くべきです。この時点では、住所や電話番号、メールアドレスがわからなくても良いので、とにかく考えられるだけのリストをつくるということが重要です。

これらのリストを作ったら、実はエステートプランニングの作業の半分は終わったと思ってください。ここからは相続財産に関するメカニズムをつくることになります。この時点で、専門家に相談しても良いですし、何もしないのも一つの考え方だと思います。フェアな専門家であれば、そもそもエステートプランニングが必要かどうかの考えを教えてくれるはずです。

エステートプランニングのメカニズム

何も相続財産に関して計画しなくても、財産を政府に没収されることはまずありません。日本でもアメリカでも法定相続(Intestate)というメカニズムが法律で定められていて、遺言など何もなくても、親族で血が近い人から順番に相続を受けられるようなシステムになっています。したがって、相続設計をしなくても、原則としては親族に財産は相続されていくことになります。

しかし、法定相続は裁判所を通すのが原則となり、時間もかかりますし、紛争の原因にもなります。ですので、自身で計画をしておくことが良いということになります。加えて、日米(または他の国)に財産をお持ちの方は、日本にある不動産等には、日本法が適用され、アメリカではアメリカの各州法が適用されるので、遺言やトラストによって、交通整理をして、死後の相続をスムーズにするメリットはあります。それから、死後の財産の使いみちをそれなりに設定したい場合、たとえば、幼い孫にお金を残すとか、基金を設立して特定の目的のために財産を使いたいといった場合には、トラストというメカニズムが用意されています。トラストというのは、生前信託と呼ばれますが、生きている間に自分の財産がどのように死後使われるのかを託しておくということを意味します。

さて、エステートプランニングというのは、アメリカでは主に4つのポイントを書類に残しておくことを包括的に言います。

①トラスト
②遺言
③財産に関する委任状
④生命維持に関する委任状

①と②は、目的は同じものですが、2つ用意しておくと良い場合が多いです。②だけでも良いことも多くあります。③と④は、皆さんの死後のためではなく、皆さんが意思表示できない、いわば植物人間状態になったときに有効になります。③は、意思表示が自分でできない場合、財産について代理してくれる人を指定する書類、④はこれ以上、生きることが難しい状況になったときに、最終的な判断をする人を指定する場合に使われます。上述した、皆さんの2つのリストを利用して作成するのが①と②になります。②については、単純に皆さんが死亡した場合に、相続財産がバトンタッチするという一場面を想定して作成する書類です。いわばスナップショット的な役割を負います。①は、死後、相続財産(受託財産ともいう)をどのように利用してくのか、ある程度細かく指定できるメリットがあります。①と②は役割的には、ほぼ一緒なのですが、①については、時間とお金のかかる相続手続の回避、親族間での紛争防止、相続財産・相続人に関するプライバシーの保護、および節税対策、のメリットがあると言われています。上記のようなメカニズムをつくっておくことで、様々なメリットは存在します。ですので、専門家に相談するメリットは、上記の内容を踏まえて各自で判断されたら良いと思います。

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