Mobility Update   〜改善する収益性、収益性を重視しはじめた マイクロモビリティ事業者〜

収益性を意識し始めたマイクロモビリティ事業者

マイクロモビリティ(バイクシェアリング、スクーターシェアリング)業界で、グローバルで収益化を目指す流れが強まっている。同業界の火付け役は中国であった。2014年にOfoが、2015年にMobikeが創業し、巨額の資金調達を背景に事業を急拡大し世界的にも注目を集めた。2017年米国で創業したLimeなどをはじめ、世界各地で創業、巨額の資金調達が相次いでいる。

同業界では、ユーザー獲得を優先する経営スタイルが注目を集めてきた。普及が進む一方で、車両への先行投資がかさみ大量の廃棄車両が発生するなど、Ofo、Mobikeともに巨額の赤字を計上し続けた歴史がある。Ofoは2019年に破産申請し、Mobikeは2018年に中国O2Oサービスの大手Meituanに巨額の赤字状況のまま買収された。昨今では、収益性を度外視しながらサービス提供地域や運営拠点を拡大し、ユーザー獲得を優先するモデルに疑問が付され、資本市場からも厳しい評価を受けていることもあり、同業界の健全性を疑問視する声もある。

・米国及び欧州の状況
米国では、Limeが2017年にバイクシェアリング、スクーターシェアリングで創業し、$1Bを超える金額を調達して同領域でのリーディングカンパニーとなっている。Limeは120以上の都市でサービスを提供していたが、今年に入り世界12都市でのサービスを終了すると発表した。大多数の都市では収益性が見込めているが、サービスを終了した都市ではマイクロモビリティの普及が進まずサービス終了を決意したとしている。各社の中で都市別の収益性を見直す動きが強まっている。

Limeの対抗馬と目されるBirdも2019年10月に$275Mの資金を調達しUnit Economics強化を急ぐ。Birdは損益分岐点達成のためにスクーターの耐用年数長期化に着目する。スクーターを長く使用し続けることでき、稼働率を上げることができればスクーター1台当たりのUnit Economics改善されるためである。1台当たりの黒字化には6か月Scooterの耐用年数が必要とされる中、従来1ヶ月程度であった耐用年数に対して、1年半の耐久性をもつBird Oneを発表している。

 ベルリンを拠点に欧州を中心に20,000台を12ヵ国40都市で運用しするTierも$275Mの資金調達を発表した。Birdと同様、Tierも新しいモデルの耐用年数は18カ月であるとしており、いくつかのマーケットでは既に損益分岐点を超えているとの情報もある。

スウェーデンのVoiは2019年11月に$85Mの資金調達を実施した。Voiは既にいくつかの都市で季節的には損益分岐点を超えているとしており、2020年には大部分の都市での損益分岐点の達成を目標に掲げる。その後、2021年から2022年には、全社としての損益分岐点達成を目指す。

以上のようにマイクロモビリティ業界では、車両一台当たりの収益性、都市ごとの収益性を強く意識していく流れが強まっている。

■黒字化をコミットしたUber

Uberも黒字化に強い意欲を見せる。2019年第4四半期の決算を発表後、Uberの株価は9%以上上昇し、1株あたり40ドルを超え、上場時の1株当たり45ドルに迫る勢いとなっている。Uberは、四半期ベースで2020年第4四半期に、通年では2021年でのEBITDA(調整後の利益)での黒字化を約束している。同四半期の発表では、インドマーケットで週間1400万ライドを達成しており、インドマーケットで50%超のシェアを持つようになったなどの好材料が公表されている。詳細なレポート内容及び分析については次号で紹介したい。

以上のように収益性より成長性を優先して拡大してきたMobility業界でも急速に収益性に対する見直しが進んでいる。