COVID-19の深刻な影響
COVID-19に関するスタートアップ企業への深刻な影響が伝えられている。Startup Genome社の調査によると、ランウェイ(将来に渡っての資金が尽きるまでの期間)が6ヶ月以内の企業が65%、3ヶ月以内の企業が41%という結果になっている。74%の企業が減収を認識しており、減収額が40%以上の企業が39%となっている。シェアリング業界や観光関連、対面でのサービスを前提とした著名スタートアップも売上への影響が深刻となっている。Airbnbは2020年の売上高が2019年の半分以下になると予想し、Lyftも決算会見で、需要は長期にわたって低迷しており最大75%減を予測している。3月から世界各地での乗車に深刻な影響を受け始めたUberの第一四半期のライドシェア部門の総取引高も前第一四半期比で減少に転じている。
テックジャイアントで相次ぐ人員整理
このような状況の中、企業は生き残りをかけて人員整理を進めており、全体の38%に当たる企業がフルタイム従業員を20%超の人員を解雇しており、60%超の人員解雇を行っている企業も14%となっている。影響が深刻と取り上げた産業でも、人員整理が相次いでいる。
ライドシェアにおいては、UberとLyftは4月下旬に揃って大幅な人員削減を発表した。Lyftは4月29日、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、全従業員の17%にあたる982人の解雇を発表した。また、UberはSECに提出した報告書で全従業員の14%に相当する3700人を解雇する計画を明らかにした。Uberは「顧客の乗車が大幅に減っているという現実があり、サポートの需要がかなり落ち込んでいる」とコメントしている。
また、観光関連では、TripAdvisorとAirbnbが大幅な人員整理を発表している。Tripアドバイザーは、全従業員の4分の1近くにあたる900人(うち600人が米国とカナダ)の人員整理を発表した。日本の観光領域の著名スタートアップも売上の9割減を発表しており、観光業界へのダメージの大きさがうかがえる。
このような中、同様に全従業員7500人の25.3%にあたる1900人の人員整理を行ったAirbnbの従業員へのメッセージと手厚いサポートが称賛されている1。意思決定のプロセスが明示されており、従業員への愛が溢れ、手厚いサポートを行っていることなどが称賛の理由として挙げられている。手厚いサポートの内容としては、解雇される従業員は、14週間分の給与(別途、勤続ボーナスあり)を受け取ることができ、期間連動オプション株式の1年要件が解除されることにより株主になれなくなるリスクがなくなり、一定期間ヘルスケアベネフィットの提供を受けることができる。
1:https://news.airbnb.com/a-message-from-co-founder-and-ceo-brian-chesky/
新たな事業機会を模索するスタートアップ
このような苦境の中、スタートアップは生き残りをかけ、急速に事業を転換している。これには、自らのCapabilityを需要がある方向に向ける、プロダクト自体を遠隔提供にする、規制変更や政府との協力の機会を活用するなどのパターンがある。
Uberは、Uber Eatsが手がける宅配事業において、従来のBoC配送に加え、個宅間配送やBtoB配送、小売りからの配送を開始し、自らの配送Capabilityを最大限に活用する事業拡張を行っている。
複数のフィットネススタジオに通うことのできる月額会員制モデルを提供していたClass Passは半数以上の従業員を解雇もしくは休職とし、ホームワークアウトクラスを配信するオンラインプラットフォームへの転換を図る。自社のユーザーをテコに、6月1日までの間は全額をスタジオパートナーに還元することにより、優良なスタジオパートナーとの関係を強める。マネタイズモデルも月額定額から従量制(Pay as you go)モデルに切り替え、巣籠りでの新しいワークアウト体験を期待するユーザー獲得を目指す。
インドライドヘイリング大手のOlaは、インド州政府とコラボレーションし、位置情報及びドライバー確認用のセルフィー機能を活用した市場でのソーシャルディスタンス確保、マスク着用を促すための州政府への情報提供サービスを提供する。
苦境の中でも光明を見出すスタートアップの素早い動きを参考に、自らを変革する時が来ている。