北カリフォルニアにいても日本の季節感を出せることが茶道の魅力
カリフォルニア有数の高級住宅地・ペブルビーチ。そこで1991年から27年に渡って茶道教授として裏千家茶道の普及に従事しておられる松井宗雍(そうよ う)先生に渡米からの生活、茶道を通しての先生ご自身の生き方、ご子息4人全員のハーバード大学卒業に関しての子育てのお話などをお伺いした。
茶道を通したご活動を教えて下さい
裏千家茶道モントレー支部の教授として活動しています。別に特別な事はしていませんが、ワトソンビルの高校生が毎年、茶道を学ぶ為に私の茶室に来てくれます。それに、モントレー大学などデモンストレーションの依頼があればさせて頂いております。また、交換留学などで日本に行く高校生が日本のマナーを学ぶ為に、訪問してくれます。
茶道の魅力は?
茶道具の組み合わせとか、着る着物がどうのこうのと言うのではなく茶道では精神的なものを一番大切にします。茶室内ではまず人の悪口などは決して口に出しません。オリジナルのマナーと言うものは茶道を通して学びます。スリッパを脱いでそのまま、といったこともありません。
それに、四季があいまいな北カリフォルニアに住んでいても季節感が出せるのが茶道です。お菓子ひとつ出す時でも、それが出来る事が魅力ですね。
茶道家としての苦労などはありますか?
幸いな事に生徒さん達のトラブルはありませんし、苦労と感じる事はないですね。
アメリカ人のお弟子さんもいらっしゃると伺いました。
茶道を取るアメリカ人はすでに日本への理解がよく出来ていて、私のブロークンイングリッシュでもよく理解してくれます。実際に、間もなく4人のアメリカ人生徒さんが免許を取得する予定です。
ご主人が「世界のラン王」と、呼ばれているアンディー松井氏ですが、氏との出会いなどを教えて下さい
主人とは奈良の田舎の聖公会の教会で出会いました。元々は高校の同級生です。若い時は喧嘩もしましたが神さまが私に選んで下さった方という気持ちが持てた事は幸いでした。主人も暴君ではなかったので、特別やり難いということもありませんでした。
ご子息4人が全員ハーバード大学卒業。子育ての奥儀のようなものがありますか?
子供達に勉強しなさいと言ったことはないです。ただ、ハーバード大学に行けなかったら、家業のナーサリーを継がなくてはならなかったので、みんな恐れをな してハーバードに行ったのではないでしょうか。それに、サリナスのハートネルカレッジに私自身が英語の勉強の為に通っていました。そんな母親の姿をみて、 自分達も頑張ったのでしょう。私は教育ママでもなんでもありません。日曜日は教会に行って、帰りにみんなでマクドナルドのハンバーガーを食べて家に帰るのが一番の贅沢でした。
これからアメリカ生活をする若い人達へのアドバイスをお願いします。
「互いに愛し合いなさい。」という、神さまの言葉をみんなが守れたら、どんなに幸せかと思います。良い会社に入り、良い家庭を持っても人間それだけではダメですね。まことの造り主を信じ、隣人を愛していくところに戦争などはありません。天災があっても助け合って行くことが出来ます。ナーサリーをやれた事、お茶の事、子供達のこと、全て神さまからのお恵みです。
インタビュー後
現在、日本の経済界で活躍しているゴールドマン・サックス副会長のキャシー松井氏は松井先生の次女である。キャシー氏が乳がんになった時の松井先生のお祈りは、まずはキャシー氏の信仰の為、次は健康の為、そして最後が仕事の為だった。 敬虔なクリスチャンである松井先生から、インタビュー後にどうしても書いて下さいと頼まれた聖句があるのでご紹介したい。
いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。
新約聖書テサロニケ人への第一の手紙5章16〜18節 / 文責:渡辺奈々