みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。昨秋から「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。 今回は、コンペティションやオーディションを受けるに当たって、指導者の立場から、そしてまた、受験する生徒さん・親御さんの心構えについてお話しようと思います。前号でも少し触れましたが、コンペティションやオーディションには様々種類があり、難易度も合格率もまちまちです。指導する側は、受けようとするコンペやオーディションが、まずその生徒にふさわしいものであるか、十分に吟味する必要があります。年齢は?時期は?課題曲は?過去の受賞者のレベルは?審査員は?受験料は?受賞、または合格した場合に与えられるものは?などです。主に学習者向けのコンペやオーディションでは、一位、二位、三位…と順位のつくものもあれば、合格・不合格で判断されるものもあります。大抵の場合は、習っている先生の方から、「今度、こんなコンペ(またはオーディション、あるいはテスト) があるのだけれど、受けてみない?」とお声かけがあるかと思います。その際、指導者の方は、それがどのようなもので、全体として合格や受賞する可能性はどれくらいなのか、そして今回受験する目的、また目標は何なのかをきちんと説明するべきです。
先生からお声かけをしてもらった生徒さんは、もうそれだけで、コンペやオーディションに受かった(受賞した)気分になってしまう場合があるからです。そして結果が思わしくないと、先生と生徒さんとの信頼関係にも影響してきてしまいます。そのような勘違いを防ぐためにも、事前にしっかりと相互に理解を深めることが大切です。音楽に限らず、コンペティション・オーディションで入賞や合格するのはとても狭き門です。どんなに頑張って練習して、当日素晴らしい演奏ができたとしても、思うような結果が得られない場合もあります。そのことを事前にしっかりと生徒さんやそのご家族に伝え、結果云々よりもその過程を通して、たくさんのことが学べる機会であること、またそのような緊張する場面で自分の実力が出し切れることがとても大切であること、それ故どんな場合でも、ベストな演奏ができるよう、当日までの練習はもちろん、体調管理にも気を配り、コンペやオーディション当日に悔いのない演奏ができるようにすること、などをしっかりと話し合った上で臨むことがとても重要です。それらの過程を通して、生徒さんやそのご家族は大きく成長することができ、精神的にも、演奏面でも大いに強くなります。思うような結果が得られなくても、諦めずにチャレンジし続けること、より素晴らしい演奏を目指して努力し続けることこそが、目標といっても過言ではないでしょう。そしてそれらの経験が今後、音楽に限らず、入試や面接など人生のさまざまな面において、大いに役立つことでしょう。