第44回 アメリカのコンサヴァトリー(音楽院)について <NEC編>

 みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを担当させていただいています。

 今回は、ボストンにある、ニューイングランド音楽院 (New England Conservatory) をご紹介しましょう。マサチューセッツ州の州都ボストンは、ボストン・シンフォニーで知られる音楽の都ですが、音楽に限らず、文化の街としても有名で、周辺には沢山の大学があり、ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ボストン大学、タフツ大学、ノースイースタン大学など、誰でも一度はその名前を聞いたことがある、有名大学が数多くある文教エリアです。音楽では、クラシック音楽がメインのニューイングランド音楽院の他に、ジャズで有名なバークリー音楽院(Berklee College of Music)もあり、近年、ボストン音楽院(The Boston Conservatory)と提携し、ジャズ、クラシックなど幅広い音楽の分野を学べる音楽大学として、話題になっています。

New England Conservatory 外観

 ニューイングランド音楽院(NEC)は、1867年にEben Tourjéeによって創立、ヨーロッパのクラシック音楽の伝統を継承しながらも、アメリカの革新的文化とも融合させた音楽院として開校。 現在の同大学の学生数は、学部生、修士合わせて750名、プレカレッジ(高校生以下のクラス) 1,400名を有する、ボストンエリアでは最大、最上の音楽院です。

New England Conservatory Jordan Hall

 NECはこれまでに沢山の著名な卒業生を輩出しており、第15回チャイコフスキー国際コンク ールのピアノ部門で銀メダル受賞のGeorge Li、シベリウス国際コンクール覇者のバイオリニスト、Immo Yang、作曲家のルロイ・アンダーソン、指揮者のAlan Gilbertなど、列挙にいとまがありません。教授陣も充実しており、近年NECのピアノ科で教鞭を取ることになった、 Alessio Bax (1997年浜松国際ピアノコンクール優勝)、ダン・タイソン(第10回ショパンコンクール優勝)、Vivian Weilerstein (Weilerstein Trioピアニスト)、弦楽器では、ヴァイオリン教授のDonald Weilerstein、Soovin Kim、チェロでは、Laurence Lesser、Paul Katzなど錚々たる顔ぶれの教授陣が名を連ねています。学内の設備も充実しており、音楽院本館にある、 Jordan Hallは、1,000人以上を収容できる同音楽院を代表する大ホールで、その内装の美しさや響きの豊かさで特に有名です。その他にも、Plimpton Shattuck Black Box Theatre、Brown Hall、Williams Hallなどを保有しています。2017年、待望の学生寮が本館の真向かいに新築され、4階から10階までは各階にラウンジ、寮の各部屋は、シングルルーム、ダブルルーム、四人部屋スイートなどのタイプがあります。

 また、NECは、近隣の大学とのDual Degree Programを提供しており、Tufts Univ/NECでは、5年で、BA (Bachelor of Arts)/BS (Bachelor of Science) + BM (Bachelor of Music)が取得できる他、Harvard/NEC 5 year BA + MMでは、5年間で、ハーバード大学のBAとNECのMM(Master of Music) が取得できます。ボストンエリアで、最高峰のニューイングランド音楽院と、全米屈指のハーバード大学の双方で学べる環境は、特記すべき点と言えるでしょう。

2017年に新築された学生寮 (photo by Peter Vanderwarker)

New England Conservatory https://necmusic.edu