第16回 ベートーヴェン生誕250周年に寄せて

皆さま、遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年も引き続き「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、今年はベートーヴェン生誕250 周年として、世界各地でベートーヴェンの曲が演奏されたり、様々なイベントが催されたりしていますね。そこで今回はベートーヴェンについての豆知識を皆さんにご紹介したいと思います。ベートーヴェンというと、まず思い浮かぶのが、交響曲第5 番「運命」、第9 番「第九」、ピアノの小品「エリーゼのために」などではないでしょうか。ベートーヴェンはその他にもたくさんの曲を作曲しており、生涯に交響曲を9曲、ピアノソナタを32 曲、バイオリンソナタを10 曲、その他室内楽や歌曲など、作品番号のある曲だけでも130曲以上、作品番号のない曲を含めると、その数は250曲近くに上ります。1770年12月に現在のドイツ、ボンに生まれたベートーヴェンは、小さい頃から音楽の才能を見出されましたが、酒好きの父親の影響でその生活は決して楽ではなかったようです。

また最愛の母親を16 歳の時に失くし、父親に代わっていくつもの仕事を掛け持ちして、幼い兄弟たちのために家計を支えました。22 歳の時に、とある貴族の尽力でウィーンへ行くことができ、そこで、多くの貴族たちの支持を受けて作曲と演奏に励みました。ハイドンやモーツァルトの影響が見られる初期の頃の作風は、古典派の様式に則り、明るく活気に満ちています。しかしこの頃から、病んでいた耳の状態が悪化し、一度は遺書まで書くほど精神的にも危機に陥りました。それでもベートーヴェンの音楽への情熱は消えることなく、黄金期と呼ばれる中期の作品には、「月光」「テンペスト」「熱情」「ワルトシュタイン」などの代表的なピアノソナタや、交響曲「英雄」「運命」「田園」などの名作を残しています。また、楽器としてのピアノの開発にも意欲的で、以前は5 オクターヴしかなかった鍵盤を6 オクターヴまで広げたり(現在は7 オクターヴ+三度)、膝で操作していた音を伸ばすレバーをペダルとして足で踏むように改良したりするなど、ピアノの発展にも大いに寄与しました。現在の形のピアノを私たちが楽しむことができるのも、ベートーヴェンのお陰かもしれませんね。晩年は、対位法を用いたフーガや変奏曲、合唱を含む交響曲第9 番など、作風もロマン派の思想を取り入れるなど変化が見られるようになりました。ベートーヴェン・イヤーの今年、是非みなさんもベートーヴェンに想いを馳せながら、音楽会に足を運んでみてはいかがでしょうか。