米国エンタープライズ企業が取り組むソフトウェア開発変革の実態

2013年に誕生したPivotal(ピボタル)はエンタープライズにおけるソフトウェア開発方法の変革や、それを支える先進的なプラットフォームの提供により、企業のデジタル変革を支援する先駆企業として知られる。12/10(月)第5回Innovator & InnovationsのPivotalジャパン、エリアバイスプレジデント兼日本担当GMの正井拓己氏講演を元に、その背景と取り組みをレポートする。

ソフトウェア開発の変革が必要となる背景


これまでのソフトウェア開発はウォーターフォール型と呼ばれる手法が主流であった。しかし、昨今のデジタル時代ではユーザーや市場の要件が刻々と変化する。そのためソフトウェアのリリースにかかる時間を最小化し、いち早くユーザーのフィードバックを受け、サービス向上につなげられる「アジャイル型」開発手法が必須となる。テクノロジー企業との競争の中で危機感をもつ欧米有力企業は、シリコンバレー企業が実践するリーン・スタートアップやアジャイル開発などのベスト・プラクティスを採用すると共に、企業文化や組織の改革と人材育成、それを支える社内プロセスの再構築、そして先進テクノロジーの導入を実施。これにより、大量データの収集と分析、そこから導き出された洞察のサービス反映、そしてクラウドを活用したサービス展開、というデジタル時代に必要なビジネスサイクルを実現した。このサイクルを高速かつ持続的に回せるか、それがデジタル時代における企業生存競争の鍵となっている。

Pivotalの成り立ちとエンタープライズでの実績

https://pivotal.io/

1989年シリコンバレー創業のPivotal Labsはリーン・スタートアップ等のベスト・プラクティスをいち早く取り入れ、Googleやebayなどのテクノロジー企業のソフトウェア開発に影響を与えてきた。この会社にVmwareからクラウド、EMC(現DELL EMC)からアナリティクスのテクノロジーをスピンアウト・統合し、2013年にエンタープライズのデジタル変革を支援する新企業としてPivotalが発足。自動車(フォード、ダイムラー)、通信(ベライゾン)、金融(シティ、オールステイト)などのデジタル変革を支援している。また、日本においても顧客企業は自動車、製造、金融、運輸、インターネット等多岐の業種に渡る。社内IT人材の不足など日本固有の課題がある一方、率先してデジタル変革を実践する企業が増えている。

Pivotalが実現するデジタル変革

Pivotalは”シリコンバレーはマインドセットである”との考えに基づき、企業のデジタル変革を支援する施設「Pivotal Labs」を世界30拠点に展開する。当施設では先進的なソフトウェアが開発できるチームの育成に主眼を置く。そのチームは3つのロール①プロダクト・マネージャー、②プロダクト・デザイナー(ユーザー指向のデザイン推進)、③プロダクト・エンジニア(アジャイルやテスト駆動型開発を実践)で構成。実際のソフトウェア開発をPivotalのプロフェッショナルとペアで行うことで、質の高い人材の育成を可能にしている。そしてPivotal Labsを卒業したメンバーが伝道師となり自社の社内文化変革を担うことで、多くの企業がデジタル時代に必要な人材と組織の組成を実現している。更にPivotalでは開発されたソフトウェアを迅速にリリースし、クラウド技術を活用して効率的に運用する仕組みとして「Pivotal Cloud Foundry」というプラットフォームを提供。このようにソフトウェア開発の改革とプラットフォームの改革の両面から、企業のデジタルビジネス実現を支援している。

刻々と変動する状況に的確に対応し、変動時の手戻りを最小化するアジャイル開発。その伝道師として世界のクライアントと共存共栄するPivotalの活躍に今後も注目したい。

菅田純登

米国富士通研究所 
R&D Management Office Manager
2017年6月より金融業界向けの新規事業開発担当として活動。米国富士通研究所の最新テクノロジーの活用及びFintech/Insuretechスタートアップとのパートナーシップによる新規ビジネス創出を推進。現在、富士通とPivotalジャパンは、パートナーシップ契約「Pivotal Ready Partner Program」を締結し、デジタルビジネス領域で協業することで合意している。