前回は529プランの種類と、適格教育費(Qualified Higher Education Expense=以下「QHEE」と省略。)に該当するもの、しないものについてまでお話しました。今回はそれら以外について補足します。
QHEEとして使わない場合は?
529プランで貯めた資金をQHEEとして使わず、他の理由で引き出す場合は、Tax-deferredとなっていた金利部分に対し、所得税(連邦税と州税)と10%ペナルティーが発生します(カリフォルニア州の場合State Taxにも2.5%ペナルティーが発生します)。
ただし、例外として、学生が非課税の奨学金を受け取る場合や、U.S. Military Academyに入学する場合、学生が障害を持ったり等した場合は、ペナルティーは発生しません。
また、積み立ての対象としていた学生が、このプランで貯めた資金を、カレッジ、大学または大学院等で使用しなかった場合は、同家族内の兄弟の学費のために使用することが可能です。その他、529 ABLEアカウント(26歳未満の方が一定の障害があると診断され、Qualified Disability Expensesとして使用する際に、非課税で引き出しができる積立口座)へ、ロールオーバーすることも可能です。
誰でも利用できる?
529プランは、アメリカに合法的に居住する方であれば、所得制限も無くどなたでもアカウントが作れます。
海外の大学でも使えるのか?
海外の大学に行く場合は、イギリス、カナダなどの一部の大学を除き、ほとんどのケースでQHEEとは認められません。日本の大学も2018年度現在、これに該当する大学は1校のみです。将来お子さまが、日本の大学に進学することとなった場合は、Tax-deferredとなっていた金利部分に対し、所得税と10%ペナルティーがかかることを、予測しておいてください。
Free Application for Federal Student Aid (FAFSA)への影響について
FAFSAとは、連邦政府からお子さまの大学費用を援助してもらうための補助金申請プログラムの一つです。学生とその両親の収入及び資産額により、いくら援助してもらえるのかが決定します。ここでは、各家庭の収入と資産額を把握するために、Expected Family Contribution (EFC)という計算方法が用いられます。簡単に申し上げますと、EFCで算出された金額が小さければ小さいほど、ご家族の収入と資産は少ないと考えられ、補助金がより多く受け取れるという仕組みです。
ただし、資産の全てがEFC上の資産としてカウントされるわけではありません。代表的なものとして、401KやIRA、その他のAnnuity(個人年金)などの老後に向けた貯蓄プランは、EFCの計算上、資産としてはカウントされません。その他には、親が持つ$20,000程度までの預貯金(Allowance)や積立型の生命保険なども、資産としてカウントされません。しかし逆に、今回の529プランや預貯金、株、投資信託などの金額が上記のAllowanceの額を超える場合は、全て資産としてカウントされます。また、それらが親の資産としてカウントされるのか、子どもの資産としてカウントされるのかによっても違いがあり、親よりも子どもの資産としてカウントされる方が、より学費の支払能力が有るとみなされ、補助金額が減ってしまいます。
では529プランで資金を積み立てた場合、どちらの資産としてカウントされるのでしょうか?それには実は、アカウントオーナーが誰なのかによって異なります。
学生の親がアカウントオーナーとなっている529プランは、親の資産として考えられます。一方、子ども自身の名義にしたり、子どもの祖父母など親以外の名義で作られた529プランでは、その資産は子どもの資産と考えられます。例えば、529のアカウントで$10,000を貯めた場合、それが親名義で作ったアカウントであれば、$564($10,000×最高5.64%)の資産と計算されるのに対して、それが子ども名義である場合は、$2,000($10,000×最高20%)の子どもの資産だと計算され、学費に対する補助金が減らされてしまう可能性があります。
529プランの制度は複雑です。規定は今後変更になる可能性もあり、ご自身のご家庭にとって有利な貯蓄となるのかどうか、よく理解した上で検討しましょう。
※弊社では、529プランに関する個々のご相談は、受け付けておりません。