外国人の犯罪については、米国で発生した同時多発テロ以降、移民法とも連動するようになりました。国務省を中心とする米国の省庁は、米国内で記録された犯罪歴を共有し、前科前歴のある外国人の米国入国を制限するようなシステムを持っています。過去の犯罪歴がすべて含まれるかどうかは、どのような資料が裁判所などによって保管されているのかでばらつきがあるようです。筆者の経験では、1980年代の少額窃盗事件が移民局のデータベースに反映されていたケースも確認していますが、90年代の事件でも反映されていないこともありました。
ただ、2000年以降のケースは、確実に移民局のデータベースに反映されていると考えた方が無難だと思います。ここでいくつか米国内で記録された前科前歴からどのような効果が発生しているのか、考えておきたいと思います。まず、ビザや永住権を申請する際に必ず前科前歴は申告しなければなりません。申告を怠ると、移民法上の詐害行為とみなされる可能性があり、入国禁止となることもあります。今後、この申告漏れについては、かなり深刻な問題となるかもしれません。
すでに、ビザを持って米国に入国している外国人が犯罪に関して有罪となった場合、最近いくつかのアクションが移民局や国務省から取られています。前政権の終わり頃から、飲酒運転で逮捕された場合、逮捕から数日後にビザの取消が米国の大使館から通知されはじめました。ビザを発給するのは、米国大使館・領事館ですから、通知も、大使館・領事館から送られることになります。ビザが取消されると、すでに米国内にいる場合には、すでにビザで許される範囲で滞在しているわけですから、その許された期間内は問題なく米国内に滞在できます。しかし、いったん米国を出た場合、有効なビザがないので、再入国するためには、ビザの再申請が必要になります。薬物の常習でないことを提出させられるケースもあります。
飲酒運転以外の有罪歴についても、入国が制限される場合があります。たとえば、ドメスティック・バイオレンスの有罪歴は、明文上、ビザの発給拒否事由として列挙されています。さらに、重罪(Felony)でなくても、複数の軽罪(Misdemeanor)で有罪歴があると、ビザの発給が拒否される場合があります。重罪とは、禁錮一年以上の法定刑が定められている場合を言います。