第11回 幼児教育について ~良い耳を育てるために~

みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。昨年より「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。音楽、そして教育に関するご質問はウェブサイトからいつでもどうぞ。

さて、今回は幼児期における音感教育についてお話したいと思います。当コラムの第一回目でもお話しましたが、人間の聴覚の発達はお母さんのお腹にいる時から始まり、運動神経や筋肉の発達よりも先にその臨界期が来ます。臨界期とは、視覚や聴覚などの感覚の成長が著しく高まる生後の限られた時期のことで、その時期を過ぎると、急激にその成長が緩やかになる、もしくは止まってしまう限界のことです。ここでは特に聴覚(聞く力)について詳しく述べたいと思います。小さい子供の成長が大人のそれよりも著しいことは皆さんご存知と思いますが、聴覚についても然りで、ある研究によると、2 歳から音感教育を始めれば、ほぼ100%、どんな子供でも絶対音感が身につくそうです。そして、その可能性は年齢が上がるにつれて低くなっていき、10 歳を超えると、絶対音感が身につく可能性はほとんどゼロに近い、とする研究もあるそうです。

もちろん、個人差がありますから、10 歳を超えてから音楽を始めても、絶対音感を身につけられた人もいるでしょう。けれども、その割合は決して高くないと思います。また、音感と一口に言っても、絶対音感だけでなく、リズム感やテンポ感、美しい音とそうでない音を聴き分けられる力など、多岐に渡っての音感を意味しますので、一概に、絶対音感が身につけばそれでよい、というものでもありません。小さいうちから、良い音楽や美しい音色を聴かせることを通して、幼児期によい耳を育てることが、何よりも大切です。ここで、絶対音感を身につけるためにとても効果的な練習方法がありますのでご紹介しましょう。それは、「ドレミで歌う」ことです。ピアノと同じピッチ(音の高さ)の声を出しながら、ピアノで弾いたメロディーをドレミで真似しながら歌うことによって、知らずしらずのうちに、絶対音感が身についていきます。そうやってドレミで歌うことが、あたかも言葉を喋るようにスラスラと口をついて出るようになれば、もう音感が身についたといっても良いでしょう。音楽が一生楽しめる宝物となるように、お子さんには是非、幼児期に音楽のおけいこを始められることをお勧めします。