Uber Money (金融サービスへの進出)
Uberは新たに金融サービスチーム「Uber Moneyを立ち上げ、金融事業に参入した。Uberは従来より、$100のチャージに対して最大5%の割引を受けられるUber Cashを展開し、自社のDebit Cardも発行していたが、より本格的に金融事業に参入することになる。Uber Moneyが提供する主なプロダクトは以下のとおり。「Uber Wallet収入支出管理を行うことができ、簡単に送金を行うことができる機能を備えている。まずは、Uber Driver App内で使用可能で、将来的にはUber とUber Eatsにも拡大予定である。※1
「Uber Debit Cardアプリと連動したMonthly Fee無料のDebitカード。ドライバーは、同カードを通じて運送の都度収入を得ることができ、すぐに使用できる。※2 ガソリンに関しては3%から6%のキャッシュバックを、部品に関しては提携店で最大10%の割引を受けられる。
「Uber Credit CardBarclaysと組んで発行するクレジットカード。Uber関連のサービスで5%の還元を、その他のサービスでも還元を受けられる。
※1Uber, Uber Eatsへの拡大は、ドライバーのみならず乗客をも金融サービスの対象として捉えていることを意味する。
※2ドライバーは、一連のサービスローンチにより、従来週単位であった運送による報酬をリアルタイムで受け取れるようになる。報酬は、WalletやDebit Cardの残高に即時に反映される。
Uberの狙い
Uberは金融サービスを通じて、ドライバー、乗客との関係を強化することにより、競争が激化する環境の中で、本業のライドシェアやUber Eatsのプラットフォームが選ばれるような差別化を目指す。更には、パキスタンやバングラディッシュを中心としたUberの全世界取引の約4割を占める現金取引を行う層をデジタルファイナンス、モバイルファイナンスの世界に導く野望を持つ。将来的には、ドライバーがUberから稼いだお金を、Uberエコシステム内のオンラインも含む加盟店で使う状況を目指す。Uber Moneyのサービス責任者であるHazlehurst氏は、Uberの巨大なユーザーベースを活用し加盟店から様々な特典を引き出すことにより、カード保有者からのフィーモデルによらない新たなモデルの構築することが可能であると考えている。
業界を超えた金融事業参入
ライドシェア事業者の金融事業参入は、Uberがはじめてではない。Singaporeに拠点をもち、東南アジアでMobilityを中心に事業を展開するGrabや、インドのライドシェア事業者Ola が先例である。Grabは2017年にO2OのPayment PlatformのKudoを買収、その後、Grab Financial Groupを設立し、インドネシアのDigital Wallet企業のOvoや日米の金融機関と提携し、金融サービスを提供している。Grabは、東南アジアで70%超といわれる銀行口座を持っていない層をターゲットとする。Grabは、多額の保険料の支払いが難しいドライバーに対して、乗客を乗せる度に、少額を掛け金を支払うMicro Insuranceを提供する。また、ビジネス資金に窮する個人事業主をターゲットに、乗客を乗せる頻度などから貸付の限度額を設定するMicro Loansを提供するなど、個人事業主の生活向上を目指し、様々なサービスを展開している。
中国でトラックと輸送貨物をマッチングするフル・トラック・アライアンスも金融事業を手掛ける。フル・トラック・アライアンスは、中国の幹線輸送トラック約700万台のうち約550万台が登録する独占的なサービスとなっている。※3 運転手の運転履歴をもとに、約3年ごとに交換する必要のあるタイヤや新しいトラックの購入費用の貸付を行う運転手向け金融ローン事業を展開する。
いずれの交通系事業者も、自社サービスから生まれる将来収益をもとに限度額を設定し貸付を行うモデルを展開しており、Amazonも店主(Merchant)に対して少額貸付を行っている。収入、支出の両面を扱うマッチング系事業者と金融の相性の良さが伺える。Appleはクレジットカードを発行し、Facebookも金融サービスへの進出を目論む。多数のユーザーを抱える異業種企業による金融事業参入が益々勢いを増す様相を呈している。
※3 2019年4月時点