カリフォルニアで最も多く生産されている赤ワイン品種といえば、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)。飲みごたえのある、ストラクチャーのしっかりとした 赤ワインが造られ、長期熟成が可能な高級ワインもたくさん造られています。その力強い味わいに惹かれ、「カベルネ好き」を名乗る愛好家が世界中にたくさんいます。愛情と親しみを込めて「カベルネ」(Cabernet)とか、さらに省略して「キャブ」(Cab)と呼ぶ人も。
でも、「カベルネ」と呼ぶとき、もう一つ忘れちゃいけない、素晴らしい赤ワイン品種があります。そう、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)。実はカベルネ・ソーヴィニヨンの生みの親という、とても偉大な品種。カベルネ・ソーヴィニヨンは、その昔、カベルネ・フランとソーヴィニョン・ブランが 畑の中で自然交配されて生まれた子どもなのです。
両親の良いところを受け継ぎ、スーパースターとなったカベルネ・ソーヴィニヨンの傍で、カベルネ・フランはちょっぴり控えめな存在となっていますが、カベルネ・フランの持つ香り高さや上品さに惹かれ、カベルネ・ソーヴィニヨンにはないその魅力に心を掴まれているのは、愛好家だけではありません。ブドウやワインへの理解が深いワインメーカーやブドウ栽培家にもファンが多いことをご存知ですか?
先日参加したパネルテイスティングでは、カリフォルニアを代表する「カベルネ」の造り手4名(マット・ディーズ氏、アンディ・スミス氏、デリア・ヴィアディア氏、フィリップ・メルカ氏)が登壇し、 カベルネ・フランが特別な理由を語ってくれました。生育環境が 味わいとして顕著に現れるので、テロワールを映し出すごまかしの効かない品種であり、また、繊細で手がかかる分、プロフェッショナル魂が掻き立てられるとのこと。
一般的にカベルネ・フランは、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早く芽吹き、早く収穫されます。先日起こったナパ・ソノマ地区の山火事では、収穫の遅いカベルネ・ソーヴィニヨン品種の一部が、収穫直前に火事に遭ってしまった畑もあり心配されていますが、収穫時期の早かったカベルネ・フランが、この年のブレンドなどで存在感を放つかもしれません。古くから助け合ってきたカベルネ親子、どちらも欠かせない魅力を持つ赤ワイン品種です。