カリフォルニアワインの世代交代

OccidentalワイナリーSteve Kistler氏と娘のCatherine

ワインの世界では、ワイン造りの歴史が長いヨーロッパが「オールドワールド」と呼ばれるのに対して、アメリカや南米、南アフリカ、オーストラリアなど、ワイン生産の歴史が浅い国は「ニューワールド」と呼ばれています。

カリフォルニアでは19世紀にはワイン造りが始まっていましたが、20世紀前半は禁酒法や戦争でワイン造りの歴史が一旦途切れ、戦後になってあらためて発展しました。現在あるワイナリーのほとんどは、戦後になってから設立されたもの。特に、1976年のパリの審判(フランスワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティング対決で、カリフォルニアワインが勝利した出来事)以降、新設ワイナリーが急増し、現在に至るまでワイナリー総数は増え続けています。

歴史が浅いとはいえ、パリの審判からも40年以上が経ち、カリフォルニアのワイナリーでも世代交代が進んでいます。オールドワールドでは、1つの家族が何代にもわたってブドウ畑やワイナリーを継承し続けていることは珍しくないですが、カリフォルニアでは、初めての代替わりとなるワイナリーも多い。

Harlan Estateを引継ぐWill Harlan氏

カルトワインの老舗、ハーランエステート(Harlan Estate)では、初代のBill Harlan氏から、息子のWill氏へ引継ぎが進んでいて、今後2年ほどの時間をかけ世代交代していくとのこと。

カリフォルニアを代表する造り手であるキスラー(Kistler)は、創設者でワインメーカーのSteve Kistler氏が、2008年に自身の持株を売却し、そこから10年かけて後継者のJason Kesner氏へと引継ぎ、2017年末でSteve氏は完全にKistlerを去りました。10年かけて注意深く継承された結果、Kistlerは品質もスタイルも変わることなく、トップ生産者として君臨し続けています。ちなみにSteve氏は、Kistlerを去ってから、ピノノワールに特化したオキシデンタル(Occidental)ワイナリーを立ち上げ、こちらは家族経営のワイナリーとして、娘のキャサリンを後継者として育てながら、親子でワイン造りを行っています。

世襲制ではなく会社が経営するワイナリーでも、代替わりが行われています。ナパのランドマーク的存在ロバート・モンダヴィワイナリー(Robert Mondavi)では、長年醸造長を務めているGenevieve Janssens氏が、新醸造長としてマスターオブワインのNova Cadamatre氏を、栽培責任者としてEmerson Philpot氏を迎え、チーム体制を敷きながら徐々に二人へと引継いでいくようです。

代替わりで各ワイナリーがどう継承・刷新するのか、注視したいところです。