第65 回 :★平均金利のトリック★

 今回と次回は、平均金利とそこにある落とし穴についてと、そのリスクを出来る限り回避出来る方法についてお話したいと思います。
 まず平均利回りとは読んで字のごとく、ある数値に関する過去実績を平均化したものです。もちろん平均ですので実際には高いときも低い時もあり、毎年毎年同じ金利が続いていたわけではありません。
 マイナスが発生しない銀行金利などであれば問題はないのですが(といっても現状は銀行金利が低すぎる点は問題と言えるかもしれませんが…)、株(Stock)や投資信託(Mutual Fund)などの利回りがマイナスにも変動するものにまとまったお金を預ける場合には「平均金利」には注意が必要になります。以下の実際の例を用いて解説致します。

平均金利のトリック

 こちらの図にあるパターン A,B,C はどれも元本 $10,000 を“平均金利3%”で5 年間運用した結果となります。
 お気づきになられたでしょうか?おそらく多くの方が平均金利3%と聞いて思い浮かべたのはパターンA ではないでしょうか?しかし、利回り3%の実際の運用がパターンA になることは、確定金利(FIX)タイプの商品以外ではほぼありえません。この場合は5 年間で15.93%増えています。
 その一方、一見派手に10%、20%と金利がついているパターンC が5 年でたった0.19%しか増えていないのです。

 このように一括でお金を預ける場合、前半でマイナスが生じてしまうと元本が減ってしまうためまず元本を元に戻すところから始めることになります。
 例えば同じ$10,000 を原資に投資をして、初年度に-40%、翌年に+40%だったとすると一見成績はプラマイゼロに見えますが、実際には初年度に$6,000 になったものに2年目に40%の金利が付くことになるので$8,400 で16%マイナスになってしまうのです。このように、マイナスに振れるリスクにある商品に投資をする場合は「平均金利」を鵜呑みに皮算用してしまうと痛い目に合う可能性があります。
 もちろん、さらに長期で保有することや、一括投資ではなくタイミングを分散して投資したり、マイナスに振れるリスクのない商品選択など回避する策はあるのですが、最近は日本でもアメリカでも様々なメディアやSNS で盛んに投資を勧める流れがあり、特にアメリカの市場は長期で見れば、S&P500 というアメリカの大手500 社の株式をミックスさせた指数の平均利回りが7%以上と非常に魅力的に描かれますし、実際にとても良い投資対象であり、アメリカの市場がとてもいい環境であることは間違いありません。ただし、ここでいう平均金利はあくまでもパターンA で計算されていることは頭に入れておかないといけません。直近の年初と年末のS&P500 の数値を比較した年平均の過去実績でも、-38.49% (2008 年)、-0.73%(2015 年)、-6.24%(2018 年)とマイナスに振れた年がありますし、年の途中にも何度もアップダウンを繰り返しており、どこで始めたかにより元本割れのリスクは存在しております。
 とはいえ、アメリカの株式市場はこのようなアップダウンを繰り返しながらもずっと右肩上がりに成長をしておりますし、特に我々の住むベイエリアは様々な生活コストのインフレーションも激しいエリアですので、日本のように現金主義で生活をしているとどうしても実質の資産の目減りは避けられませんし、こういった株式市場をギャンブルのように考えて怖い怖いと目を背けるのはもったいないと感じます。
 正しく学んだ上でやらないという選択肢を取っているのであればいいのですが、そうでない場合は、この機会にリスクやリターンそれを避ける方法を学んでいただければと思います。
 次回は、この変動するものに投資をする場合のリスクを軽減させる方法について掘り下げていきます。