Mobility サービスを巡る直近の動向

~モノの移動を考える~

注目が集まるモノの移動

北米のUber、中国のDiDi、東南アジアのGrabなど、各地域のライドシェア大手に巨額の出資を行ってきたソフトバンクが、無人自動運転車による食品宅配サービスを提供するNuroに$940Mを出資したことが話題を呼んでいる。Nuroが、モノの移動を扱っていることと、自動運転技術を活用していることがポイントとなっている。

ヒトの移動がMobilityビジネスの花形とのイメージをお持ちの方も多いと思うが、ビジネスとしてはモノの移動を扱う宅配サービスの方が好調との見方も大きい。例えば、Uberはレストランの食事についてUber Eatsと言われるオンデマンド宅配サービスを提供しているが、これがUberの全取引の16.5%を占めている。Uber Eatsのビジネスは、直近1年間で150%の急成長を見せており、地域によっては70%超のシェアが見込まれており、十分な採算が見込める可能性があるという。オンデマンド宅配サービスは全世界で$100Bの巨大市場と言われ、苦戦が続くライドシェアビジネスを営むUberの中でも、Uber Eatsには稼ぎ頭としての期待が寄せられる。Uber Eatsの影響の大きさを物語るエピソードとして、客席を持たないバーチャルレストランが世界で急増中であるという。

スーパーマーケットの宅配サービスを手掛けるスタートアップInstacartの時価総額は2018年10月時点で約8500億円($7.6B)であり、レストランの食事の宅配を行うDoorDashの時価総額は2018年8月時点で4500億円($4B)とされる。両社とも、高い時価総額で大量の資金を調達しており、モノの移動(日用品や生鮮、食事の宅配)への期待が大きいことが伺える。

モノの移動の無人化に挑戦する

冒頭のNuroは、このモノの移動を無人化しようというスタートアップである。2018年12月より大手スーパーマーケットチェーンのKrogerと提携して、無人自動運転車による食品宅配サービスの提供をアリゾナ州で開始した。Krogerの顧客は、Webサイトあるいは専用アプリで商品を発注する際、自動運転車での配達も選択できる。現在の配達料金は、1回約6ドルとなっている。本格提供開始の前段階として8月から実施されたテストでは、Nuroが開発したトヨタのプリウスベースの自動運転車が使用されたが、12月のサービス本格提供に合わせ、Nuroオリジナルの運転席がない完全自動運転車が導入された。

とある調査会社の調査では、配送料金の高さを理由に3分の1の人が生鮮食品の宅配は利用しない意向である回答している。理論的には、無人運転により宅配コストを今までに無かったレベルで下げることが可能になると考えられる。今後どの程度配送料金を下げることができるかがNuroのチャレンジとなるだろう。

モノを買った顧客を動かすWaymo

配送料金の削減、無料化に全く違う形でアプローチするのが、Alphabet(Google)傘下の自動運転子会社であるWaymoである。Waymoは、WalmartのWebサイトで商品を注文した際に、顧客を無料でWalmartまで自動運転車で送迎するサービスを実証している。モノを購入した際に、モノを移動させるのではなく、顧客を移動させる逆転の発想である。このモデルでは、企業側が顧客の店でのついで買いを期待して、移動料金を負担する合理性がある。Alphabetは、広告を見た顧客を店舗に送迎する技術に関して特許を取得しており、無料で顧客を移動させることを視野に入れていると考えられる。

大きなビジネスとなるモノの移動に対して、自動運転、無料化をキーワードに、様々な企業の挑戦が続きそうである。