ヘルシーでおいしいレンコンチップス。日本人に人気のレンコンチップスのすばらしさをアメリカで広めるために、ゼロから起業し、現在Good Rootsのオーナーを務めるレノックス美樹さんにお話を伺いました。
レンコンチップスを作ろうと思ったきっかけとは?
シンガポールやアメリカでホームパーティーをする時に、何か珍しいものを出したくてレンコンチップスを作って出してみたんです。日本的で、かつ人気があって、でもあまり家では作らないもの。そしたら、小さいお子さんまで皆さん喜んで食べてくださって。レンコンの甘みともちもち感や、他のスナックよりもヘルシーなところが気に入ってもらえたんだと思います。それからパーティーではレンコンチップスが定番のメニューになりました。そして下の子も高校生になって大分手も掛からなくなった頃、ちょうど50歳になるし、それを機に何か始めてみたいなと思い、これを商品にしてみたらどうかなと。蓮の花は神聖で清廉と美の象徴として広く知られているけれど、その根っこの蓮根はとても栄養価が高くて健康にいいのに、アメリカではまだあまり知られていない。また日本では先を見通すという意味で非常に縁起の良いもの、これは是非皆さんにも知ってもらいたいなと商品化へ取り組み始めたのがきっかけです。
ポテトチップスと比べて、レンコンチップスが体に良いのはなぜでしょうか?
レンコンチップスが一番素晴らしいのは、ビタミンCと繊維質がすごく豊富だという事です。ビタミンCが35%、繊維質が44%。それ以外に鉄分、プロティンなど体に良いものが多く含まれています。女性の方 で鉄分が不足がちで、それを補うために買ってくださるお客様も多いです。お通じにもとてもよく、またレンコン自体が心臓や免疫システムを高める働きもあります。レンコンは熱処理を加えることで栄養価が下がることはないので、レンコンの栄養素をそのままこのチップスで取ることが出来ます。
レンコンチップス(Lotus Chips)
レンコンの味をそのまま楽しめるOriginal、海苔の風味 際立つSeaweed, つんとしたわさびの香りが癖になるWasabiの3種類。ベイエリアの日系に限らず多くのスーパーで購入が可能。オンラインオーダーはこちらより。
https://good-roots-lotus-chips.myshopify.com/
アメリカのマーケットへの挑戦はどのようなものでしたか。
商品化するまでの道のりはひたすら研究と勉強でした。食品リテール業界は全くの素人だったので、ワークショップに参加したり、色んな方にお話を伺ったり、沢山のグロサリーストアを訪ね、販売経路・パッケージング・値段設定・売れ筋など市場調査や情報収集を重ねてそれを元にどうしたら商品化できるかを一つずつ考え、事業計画を立てて行きました。一番感じたのはやはり商品にストーリー性があること。そこで会社名を良い根菜のgood root vegetableと、日本という自分のルーツから生まれたものとをかけてGood Rootsと名付け、その誕生にまつわるストーリーを伝えるべく、1軒1軒自分の足でお店を訪ねて歩きました。それから少しずつ扱ってくださるお店が増えて行きました。
ゼロから商品開発、販売までを学ばれた、ということですが1番大変だったことは?
家で作っているものを単にそのまま商品化することはできません。商品の品質をコマーシャルレベルまで引き上げ、量生産を可能にしなければなりません。レンコンにはでんぷん質が多く含まれていて、とても焦げやすいので品質と歩留まりを安定させ、量生産を軌道に乗せるのが本当に大変でした。最悪の時は生産量が目標の歩留まりが半分に至らないという時もありまし た。長い間何度も調理法や工程を模索しテストと失敗を繰り返しやっと改善に成功しました。 NHKの朝ドラでカップヌードルの話がありましたよね。最初はまさにあんな感じでした。家の中がラボと化し、レンコンチップスだらけみたいな(笑)。
多くの試行錯誤を経てレンコンチップスの販売に至ったとのことですが、失敗しても諦めなかった理由は何でしょうか。
今となっては大変だったなと思うんですけど、その段階ではこのGood Rootsというブランドがこれから自分をどんなところに連れて行ってくれるんだろうというわくわく感や楽しみの方が大きかったんだと思います。 大変なことは沢山あるけれど、一つ一つの小さな瞬間を楽しまないといけないなと思って。例えば配達の帰りにすごい渋滞に巻き込まれて迂回しなければならないという時も「迂回したおかげで今まで通ったことのない新しい場所や景色を見せてもらったな」と考えるようにして。 色んな事を一つずつ真摯に課題や困難をクリアして行くことによって、小さかったものが少し ずつ形になってく。どんどん道を先に進むというより、目の前の課題をしっかりこなして行けばその後ろに道ができてきたかな、と。たとえまた同じような困難にぶち当たっても、その乗 り越えてきた経験が次へ進むための道標となり、諦めずにもうちょっと先に進んでみようと考えられるようになったのかもしれません。 そして、やはり一番大きいのは起業当初から顧客の皆様や、家族・友人からの沢山のサポートや励ましがあったからです。何度も壁に打ち当たり、その度に皆さんに背中を押して頂きました。これからも感謝の気持ちを忘れずにまたいつか恩返しできる様に少しずつ進んで行けたら と思います。
子育てなどのプライベートと仕事との両立はどうされていますか?
今では下の子も大学生になったので大分楽になりましたが、去年までは送り迎えやお弁当作りもありました。でも趣味のテニスもヨガもしたい!全部する為にはとにかく無駄を省く!その為にできるだけ家事や仕事配分を事前に計画を立てて時間を作るようにしています。例えばヨガはクラスを受けに行くのを辞め、毎朝起床後30分自分で考えた内容でやって、残りの30分を夕食の下ごしらえに充てるようにしたり、週末テニスに行く際には大体配達・営業・デモ販売を絡めたりして、セーブした時間を他に充てるようにしています。前日に翌日の準備を終わらせておくのも1日をスムーズにスタートさせるためには大事かと思います。
スタッフの方との関係性はどう築かれていますか?
年に2回夏と冬にスタッフとその家族や子供も一緒に「ご苦労さん会」と誕生日のお祝いをするようにしています。去年の夏はゴールデンゲートパークでピクニックをしてみんなでサッカーやスイカ割りをして楽しみました。冬はホリデーディナーに出かけます。中には今までこのような会を経験したことのないスタッフもいて、みんながとても楽しみにしてくれていま す。今回のピクニックもスタッフのアイデアで実現しました。こういう機会に普段キッチンでは見ることのないお互いの側面や特技なども垣間見ながら色んな話をして交流を深めています。
職場でのコミュニケーションで心がけていることはありますか?
その日のそれぞれのスタッフの表情や様子をよく見て会話をするようにしています。元気がなかったりすると「大丈夫?」と声かけしたり。問題があれば報告し話し合い、いち早く解決して行くというスタンスは皆んな理解してくれていると思います。私がスタッフから学ぶことも多々あります。やはり話しやすい環境が大切で、お互い気軽に冗談なども言いやすい雰囲気を作れるよう心がけています。私がたまに考え事していてう〜んって顔してると、スタッフか ら「Miki、顔が怖いよ!」と心配されるんです。「あ、いけないな」と。 例えば、中南米出身のスタッフがいて、彼らの文化でくしゃみをすると旦那さんや恋人が浮気をしているという迷信があるんです、「サンチャ」って言うんですけど。わさび粉で味付けする時、鼻につんと来てどうしてもくしゃみをしてしまうんです。すると皆で大声で「サンチャ!今旦那さんはどこで何をしているのかしらね〜」と皆でからかい合って(笑)。こうやってチームの一体感をキープしつつも、皆んなで作り上げているこのブランドに誇りとプラ イドを持って真摯に取り組むように常々話しています。
今後の目標は?
創業して丸4年が経ち、取引先も100店舗を超え、カリフォルニア州に限らずニューヨーク・ ハワイその他のいくつかの州でも少しずつ扱って頂けるようになりました。オンラインストアではそれ以外の州のお客様からの注文も多く、もっと大量生産をしてコストを下げ、そういった方々の地域でもディストリビューションができるようになるのが今の目標です。
Jweekly読者へのメッセージ
美味しいものを食べて、心と体をハッピーに!そして色んなことにトライして新しい自分を発見してください!
店舗情報やレシピなどはこちら!
goodrootsfoods.com
レノックス美樹
鹿児島市生まれ。1988年にサクラメントに1年間の留学を機に渡米。帰国後、日本で外資系DFS Group LimitedにてMarketing Cordinatorを務める。1993年に結婚を機に、アメリカに移住したのち、Yagi Tsusho America Inc.にてSales Manegerに就任。その後、夫の駐在のため2003年に東京、2006年にシンガポールへ家族で移住し、4年を過ごす。アメリカに帰国後、シンガポールやアメリカでレンコンチップスをホームパーティーで振る舞い好評だった経験を活かし、2015年Good Rootsを設立。現在までオーナーを務める。