第20回 日本とアメリカの音楽大学、ここが違う! (前編)

皆さま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。今回は、日本とアメリカの音楽大学の違いについてお話します。日本とアメリカでは、音楽を探求するという目的は同じでも、学生数やカリキュラム、受験の必須科目など大きく違う点があります。これから音楽大学への進学を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

まず、最も目を引くのが、その学生数の違いです。日本の音楽大学では、一部の国立大学(東京藝大など)を除き、ほとんどの私立の音楽大学は、全校(学部生・大学院等含む)の学生数が1000 人以上と比較的多いのに比べ、アメリカの音楽大学、特に難関と言われる学校では、最も少ないところで、全体の学生数が110 人(Colburn School)、次いで、175 人(Curtis Institute)、 (注: これらの音楽院では、入学するにあたって授業料がすべて給付型奨学金でまかなわれる他、Colburn School では、寮費も支払う必要はない) その他の音楽大学・音楽院でも、647人(Juilliard)、800人(NEC)、288人(Rice Univ)、422人(SFCM)、200人(Yale)、と軒並み1000人以下の大学がほとんどです。もっとも中には、インディアナ大学のように音楽学部だけで、学生数1600人というマンモス大学もありますが、(インディアナ大学の全校学生数はなんと4万8000 人!) それは例外としても、ほとんどのアメリカの音楽大学・音楽院は、日本の音大よりも小規模なのです。しかし、人口を見ると、アメリカは、日本のおよそ2.5倍であり、高校を卒業する人数は日本の約3.5 倍です。また世界トップクラスの音大には、中国・韓国を始め、諸外国からも留学を志す学生たちが受験することから、倍率はかなり高くなります。

また、入試の項目も、日本とアメリカでは、大きく異なります。日本の音大では、専攻科目の実技試験以外にも、副科ピアノを始め、聴音、楽典、和声課題、新曲視唱、コールユーブンゲン視唱、即興演奏(ジャズ専攻の場合) など、試験が多岐に渡るのに対し、アメリカでは、専門科目の実技試験のみ、一発勝負です!(一部、楽典の試験が課される大学もありますが、あくまでもクラス分けのためであり、合否判定には影響しません。) もちろん、アメリカでも、聴音、楽典、和声課題、副科ピアノ、オーケストラなどは、実際に大学に入学してから、クラス分けテストや、シーティング・オーディションなどを経て、本格的に授業で学びます。日本では幼少の頃から、ピアノを始め、聴音やソルフェージュ、楽典など、普通の小・中・高校では教えない、音楽の専門知識やスキルなどを、音大の付属音楽教室などに通って勉強する場合が多いのに比べ、アメリカでは、高校卒業まで自分の専攻科目しか勉強して来なかった人もいて、いざ音楽大学に入ってから、大慌てで副科ピアノを習い始める、といった話も耳にします。アメリカの音大入試では、その分、専攻科目の実技試験の比重が大きいと言えるでしょう。(次号に続く)