第26回 アメリカの大学受験の概要 (後編)

 みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。今回は、アメリカの大学受験においての早期出願(Early Decision とEarly Action) についてお話しようと思います。

 早期出願とは、一般の願書受付(Regular Decision) よりも一足早く、出願できる仕組みのことで、この早期出願には、Early Decision とEarly  Action  の2種類の方法があります。それぞれの大学によって、どちらの方法が採用されているかが決まっています。早期出願では、合否結果も一般入試よりも早く知ることができるので、大学入試の戦略を立てるときには大変有利となります。また、早期出願者は、一般入試よりも合格率が高いとされており、一説によると、1.5 倍から3 倍、合格するチャンスが増えるといわれています。第一志望大学にEarly で合格できれば、一般入試で他の大学にApplication( 願書) を出す必要がなくなり、いち早く、受験のストレスから開放されます。
 Early  Decision  とEarly  Action  は、どちらも早期にApplication  を提出しますが、その制度には違いがあります。まず、Early  Decision  では、申し込むことができる大学は一校に限られ、合格した場合には、必ず、入学しなくてはなりません。アイビーリーグの大学では、コロンビア大学、ブラウン大学、ペンシルベニア大学、ダートマス大学、コーネル大学などが、このEarly Decision 制度を採用しています。一方のEarly Action の方は、合格しても、必ず入学しなければならない、という縛りがありません。ですから、Early  Action  で合格をもらっていても、他の大学にも合格した場合、別の大学を選んでもよいのです。
 このEarly Action には、2種類あり、一校しかEarly Action を申し込めない、Restrictive Early Action (REA) と、制限なく出願できるNon-restrictive Early Action があります。REA 方式を採用している大学には、ハーバード大学、プリンストン大学、イェール大学、スタンフォード大学などがあります。

 早期出願では、前述の通り、結果が早く分かり、合格を勝ち取れれば、早々と大学受験のプレッシャーから抜け出せ、高校最後の年をフルにエンジョイできるメリットがあります。ただし、注意しなければならない点もあります。まず、早期出願では、夏休み明け直後に願書を提出するため、エッセイやレコメンデーションレター ( 推薦状)、GPA やSAT/ACT テストスコアなどを前もって準備しておく必要があります。特にエッセイやアプリケーション・フォームの作成には、時間を要することから、8月末~9月にその年の受験要項が発表されたら、すぐに準備に取り掛かる必要があります。また合否結果によっても、その後の行動や精神面に大きな差が出ます。運良く合格できれば、万々歳ですが、不合格になった場合のことも見据えて、計画を立てなくてはなりません。不合格になって、がっくり落ち込み、その後のRegular Decision の大学の出願準備の意欲が低下したりすると、後々の結果に大きくひびきます。また、Deferral といって、合否保留になる場合もあります。この場合、Regular Decision の結果が出る3月末には最終的な結果が出ますが、その間、他の大学への願書を作成するとともに、保留になった大学への追加書類や新たな功績やテスト結果などを提出して、アピールすることも忘れずに。Defer だからといって、ただ待っているだけでなく、積極的に行動することが、合格を引き出すカギとなります。