第33回:一般大学の音楽プログラムについて <スタンフォード大学編>

 みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。

このコラムを書き始めて、今年で3年目となります。ベイエリアのみならず、全米各地、そしてまた日本から、アメリカの音楽大学について興味や関心がある方からの反響の大きさに、驚きと感謝の気持ちで一杯です。これからもアメリカの音楽大学進学、また音楽教育全般について、役に立つ情報をお届けして参りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

Stanford University Bing Concert Hall
https://live.stanford.edu/venues/bing-concert-hall

 さて、今回は、SF ベイエリアの名門、スタンフォード大学の音楽プログラムについてです。スタンフォード大学は、クリントン元大統領の一人娘、チェルシー・クリントンさんが入学したことでも話題となりましたね。イギリスの大学評価機関である、クアクアレリ・シモンズ(QS)が毎年発表している世界の大学ランキングでは、2021 年に世界第2位、また2020 年度の大学合格率は4.3%でした。それほどまでに全米最難関であり、また評価の高い大学なので、当然アカデミックの学問が中心ですが、音楽学部もあります。同大学が所有するBing Concert Hall は、ロサンゼルスのウォルト・ディズニーホールの音響も手がけた、豊田泰久氏らがデザインや音響設計に携わった一流の音楽ホールで、2013 年に建設されました。国内外から著名なアーティストたちを招聘してコンサートを行っている他、学内オーケストラなどのコンサートでも使用されています。

 スタンフォード大学では、アンダーグラッド(学士過程)、グラッドスクール(修士課程)ともに、音楽を専攻(メジャー)とすることができます。ただ、これだけ最難関の大学ですから、音楽のみを専攻とする人はほとんどおらず、大抵の学生は、ダブル・メジャー、もしくはマイナーとして、音楽を専攻する人が多いようです。大学では、作曲、指揮、音楽史、民族音楽、楽典、音楽学、演奏(パフォーマンス)、ジャズなどが学べる他、自らデザインした専攻というのも認められています。音楽学部だけで教授陣は100名ほどいて、ピアノや声楽(オペラ含む)の他、ほぼすべてのオーケストラの楽器の個人レッスンが受けられます。私の周囲で、高校まで真剣に音楽を勉強した人の中でも、スタンフォード大学に進学を決めた学生は多く、そのほとんどが音楽以外でも自分の将来の可能性を探究したいという強い意思を持っていると感じます。

Stanford Univ. Music Major Overview
https://music.stanford.edu/academics/undergraduate-major

 また、スタンフォード大学には、CCRMA(カルマ)と呼ばれる、北米最大規模のコンピュータ音楽センターがあり、コンピュータを用いた音楽や作曲など幅広い分野が学べます。実は、私が日本にいた時に教えていた生徒が芸大に進学し、彼女は芸大からこのスタンフォード大学のCCRMA に一年間、奨学金給付制度で留学することになり、そこで私との20 余年ぶりの再会を果たしたという思い出深いエピソードがあります。教え子たちが、成長して大学に進学したり、卒業後も立派に活躍したりする姿をみるのは、指導者として冥利に尽きます。これからも若き音楽家たちを応援しています。