日本への帰国

日本での老後のおひとり様生活を考える

 高齢者の一人暮らしが増えています。もともと独身である、子供の独立や定年を機に配偶者と離婚した、病気や事故で死別した、など理由は人それぞれですが、今回は一人暮らしを永住帰国した日本で過ごすケースについて「住み家」「老後資金」「終活」の観点から考えてみたいと思います。


1.住み家

持ち家 or 借家

 この選択の対象は日本に家がない人になります。購入となればまとまった資金が必要ですが、高齢者で一定の定期収入が無い場合や米国籍の人で在留資格の永住権を取得していないケースではローン契約は難しいようです。米国の不動産を売却したお金で購入する場合は日本への送金方法も考えなければなりません。また日本の不動産市場は米国の様な右肩上がりではなく(首都圏は今後も上がるでしょう)、今後人口減により不動産価格が下がると言われています。将来高齢者施設に入居する際の資金として売却のことまで考え、将来の不動産価値を見極めたいところです。

 借家の場合、頼める保証人がいない人や高齢者(特に単身者)は賃貸契約しづらい状況でしたが、最近では保証代行会社増えていることや(ただし保証料が発生)、貸主側の考え方も変わり以前よりも契約しやすい傾向にあるようです。またサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)や公営住宅(UR住宅など)のように年齢制限のない賃貸住宅も増えています。

親の介護が必要

 親の介護が必要な場合、施設に預けるか自宅で介護(訪問介護サービスを利用)するかになります。施設であれば都合よく近所の施設が見つかるかどうかわかりません。家族として時々訪問することを考慮するのであれば自宅の場所も考えなければなりません。

 一方自宅介護の場合でも、やはり家族として実家へ通うことになるので場所は重要です。親の実家に住むというのも一つの選択肢です。

2.老後資金

必要な金額と年金

 老後生活資金の基本は何といっても年金です。年金には日本の厚生・国民年金や米国Social Securityといった公的年金の他、企業年金や加入団体の共済金があります。生涯受給可能な年金はたとえ長生きしても預貯金のようになくなることのない大変ありがたいもですので、早めに自分の年金額を確認しておくことは重要です。

 老後に必要な金額ですが、以前日本で老後に2,000万円が必要と某大臣が発言して物議をかもしましたが、あくまでも平均的なサラリーマン世帯がつつましく生活した場合のモデル例なのであまりあてにはなりません。それより自分の日常生活費を記録して支出額(生活費)の目安を把握しましょう。これに収入(年金他)と不足時の貯蓄切り崩し額がわかれば、何年で貯蓄が底をつくかも算出できます。できれば日本の物価に合わせて算出しましょう。

健康と就労

 将来の生活資金を見積る際にポイントとなるのが医療費です。このまま大きなけがや病気なく過ごせるか、どのような傷病が発生するのかはわかりませんが、年齢を重ねるごとに発生する可能性は高まります。また傷病とならなくても高齢になり足腰が弱れば寝たきりや介護が必要な生活になります。ですから健康寿命をいかに伸ばすかということが健康面だけでなくお金の面でも重要となります。

 その対策として有効なのが老後も働いて社会とつながりを維持し続けることです。働いて頭や体を動かし人と交流することは、健康面でプラスになりますし収入も得られます。せっかくリタイアしたのですからフルタイムで働く必要はありませんが、高齢での就労は是非とも検討したいものです。

3.終活

 終活とは自分が亡くなった時のための準備活動のことですが、中でも実際亡くなってしまった時のことを誰に託すかということは重要です。通常は相続人である子または身近な親族になりますが、託せる人がいない、または子がいたとしても米国居住ですぐに来日できないし日本の手続きもわからない、といったケースではどうすればよいか?誰か協力者(専門業者も可)を探すことになりますが、遺言状やエンディングノートの作成も一つの対応策になります。亡くなった時の手続きとしては、行政手続き(葬儀、火葬・埋葬、自治体への届出、社会保険等の解約)、持ち物の処分(動産・不動産)、お金(債権債務の精算、相続税など)になります。特に相続税については税理士などの専門家の協力が不可欠です。日米両方に資産がある、相続人がいるというようなケースでは両国での終活が必要です。

 いかがでしょうか?尚以上は「こうした方が良い」「この方法がおススメ」といったアドバイスではありません。人それぞれの置かれた環境や価値観は異なりますので、皆さん自身が考える上での参考として下さい。大事なことはこうしたことへの早めの準備です。


ライフメイツ社会保険労務士事務所代表
蓑田  透 氏
米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続の代行サービスを多数手掛ける。またファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)、米国税理士、宅建士として老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、高齢者施設や住居探し、老親の介護や成年後見、ライフプラン、就労・起業、税務、国際金融などの相談・代行)や海外居住者の日本国内での手続の代行、支援サービス(戸籍謄抄本や各種証明書の取得、金融機関・不動産業者との手続支援など)を行なう。

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