– 判例で学ぶ注目の米国法- 萬弁護士の法律寺子屋 ~第126回~ メタバースとは~背景と法的リスクポイント

~第126回~ メタバースとは~背景と法的リスクポイント

最近よく耳にするメタバースという言葉は、インターネット上の仮想空間のことで、超越したという意味の「メタ」と、宇宙という意味の「ユニバース」を組み合わせた造語だ。2022年1月にラスベガスで開催されたCES(世界最大規模のテクノロジー・トレードショー)でも、このメタバースが主要テーマとなり、ソニー・グループやパナソニックなどの日本企業もその最新の技術を公開した。

米国では、Facebook社が社名をMetaに変更し、バーチャル・オフィスのベータ版を公開したり、Microsoft Teamsが、3Dアバターを取り入れたビデオ会議の導入計画を発表するなど、メタバースは、今やVirtual Reality (VR)やAugmented Reality (AR)を取り込んだテクノロジーの先端として最も注目されるトレンドとなっている。今回はこのメタバースについて、簡単な背景と企業が留意すべき法的リスクについて触れてみよう。

簡単な背景

メタバースの原典は「Snow Crash」というSF小説で、作家のNeal Stephensonが創り出した言葉だといわれている。今でこそブームとなり企業の投資が加速しているメタバースだが、実は約20年前の2003年に、サンフランシスコに本社を置くLinden Lab社がリリースした「セカンドライフ」というゲームで、すでに3D仮想空間の中でアバターを使ったコミュニケーションが行われていた。まさにメタバースの先駆けだったといえるだろう。その後、日本でもユーザー数が増え、日本企業も参入していったが、当時はそのビジネスモデルが斬新すぎたのか、数年でブームが冷めてしまった。現在のゲーム界では「フォートナイト」「あつまれどうぶつの森」「マインクラフト」などが、メタバースに該当するゲームとして、再び大ブームを巻き起こしている。

メタバースは、ゲームの中の仮想空間だけではなく、医療やメンタル治療の分野でも進化を続けている。既にARを使用した脊椎固定手術が行われており、創薬分野でもVRによる共同研究開発が行われ、コストの削減と期間短縮が期待されている。また、メンタルヘルス部門では、仮想クリニックやVRを取り入れた画期的な治療が求められていて、誰もがどこからでも治療を受けられるエコシステムが進化しつつある。

法的リスクポイント

メタバースを利用する応用範囲が広がり、あらゆる業界において経済活動が促されれば、企業は複数のメタバースを通して取引を行うことを求められるようになるだろう。メタバースを取り囲む包括的な法的環境と枠組みは、これから少しずつ構築されるため、猛烈な速度で開発されているテクノロジーやシステムに、法制定がついていけていないのが現況だ。新しい法的な枠組みが制定されるまで、企業は現行法下で活動・取引を行うことになる。以下に、メタバースで創出・取引されるコンテンツや、ソフトウエアに関する現在の法的課題とリスクポイントをいくつか挙げてみるが、今後大きく拡大、変容することが予想される。

  • 個人情報、プライバシー法などの消費者保護法
  • データセキュリティ、サイバーセキュリティ
  • ソフトウエア・ライセンシング、ハードウエア、IoT、API、ウエブホスティング、サービス、そしてクラウドコンピューティング関連の技術契約書の見直し
  • 知的財産の所有権と保護
  • 企業間の提携に伴う独占禁止法順守

考察

パンデミックを背景に、メタバースは将来ますます急速に拡大していくだろう。しかし、今後のテクノロジーの発展に期待が高まり企業投資が増加する中、それに伴う法的な課題も増え続けていくことは否めない。今後もその法的なアップデートに注目したい。

ここで扱う内容は、一般的事実であり、特定の状況に関する法的アドバイスではなくそれを意図したものでもない。

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