桂 かい枝 書面インタビュー

桂 かい枝 落語家

1994年に上方落語の五代目桂文枝に入門以来、落語家として高い評価を受け活躍を続ける桂かい枝氏。1997年より古典落語を英訳した英語落語に取り組み、翌年からアメリカ公演をスタートした。海外での公演は300回を越える。NYブロードウェイで開催した英語寄席『New York Hanjo-tei』や、アメリカ人による『落語コンテスト』もプロデュースしている。

今回、サンフランシスコ桜祭りにて特別公演が決定。公演に向けてお話を伺った。

英語落語を始めたきっかけは?

きっかけは色々ありますが、まずは世界の人が持つ日本人のイメージです。笑いについていうと、「ユーモアのセンスがない」「笑いが苦手」というネガティブなものが多いようですが、実は日本には落語という400年も続くすごい笑芸「落語」があり、その間ずっと変わらず庶民に愛されています。現代も古臭くなることなく、寄席では365日エンターテイメントとして興行を行なっています。落語という世界に誇れる文化を広く、多くの人に知ってもらいたいという思いがきっかけです。

日本とアメリカで寄席を実施する時の違いは?

2008年文化庁文化交流使として、1年間アメリカ33都市を回って公演を行いました。その時に学んだことです。言葉の持つ文化が日本語と英語とでは大きく違います。日本語は協調の言語、英語は主張の言語。例えば挨拶するときも日本語は一歩引きます。英語は一歩踏み込みます。落語も同じく、英語で(特にアメリカで)演じる際は踏み込み意識で、オーバーに大げさに主張する気持ちで演じます。米国人は特に笑いに対して積極的です。ユーモアを理解することが知的の表れという意識が強く、オチを先読みして笑う傾向があります。笑うことに前向きです。

アメリカ初公演から19年、落語をもっと有名にしたい!という想いの手応えは?

「能狂言」「茶道」などは、古くから日本文化研究者の間でもテーマとして取り上げられる機会が多かったように思いますが、落語を研究する人は皆無でした。ですが、昨今、落語をテーマとして熱心に研究している方が増えつつあります。私のところにもインタビューや取材の問い合わせが多くきます。また日本に現在900人のプロの落語家がいますが、その中に3名の外国人の落語家がいます。大阪では二人のカナダ人が落語家として 活動しています。随分、国際化してきたなあと嬉しく思います。

海外でのパフォーマンス、今後の展望とゴール

世界に広く落語という文化を根付かせたいというのが目標です。落語を鑑賞するだけでなく、武道や茶道、華道と同じように、世界中に落語を気軽に演じるような人が増えれば嬉しいですね。日本語でも英語でもフランス語でもスペイン語でも、いろんな言語でやって欲しいです。

落語家を目指すアメリカ人へメッセージ

落語は言葉だけの、想像だけの世界です。何も準備するものはいりません。誰でも手軽に始められます。500とも600とも言われる演目が現代まで生き残っています。著作権はありません。ぜひ落語という文化に触れ、 チャレンジしてみてください。