3月最終週にナパバレーへ行ったときのこと。その少し前から、ブドウの木の新芽が出てきたという情報を聞いていたので、芽吹いた新芽を見られることを楽しみに、畑へと向かいました。
ブドウの木は、秋の収穫が終わると、冬は休眠期間に入ります。人間と同じように、ブドウの木にとってこの休養は、翌年また良い果実を実らせるためにとても重要。そして、この休養期間に重要なのが、水と養分。
ワイン用のブドウ栽培で面白いことの一つは、水をたっぷりあげてはいけないこと。ブドウの葉が青々と茂るのはブドウの木が元気な証拠で良いことなのだけれど、水をあげすぎると、木が元気になりすぎ、枝を伸ばし葉っぱを茂らせることに栄養を使いすぎて、その分、肝心の実に栄養が行き渡りにくくなってしまいます。また、水分を多量に含んで水膨れしたブドウの実で作るワインは、水で薄めたような凝縮感のない味わいとなってしまいます。
逆に、最低限の水しかあげない環境では、ブドウの木は子孫を残そうと必死になって、果実に栄養を集中させるので、凝縮感が高まります。だから、高品質なワイン用ブドウ畑では、木が果実を育てる期間は、あえて、最低限しか水をあげないのが原則。その代わり、収穫後の休眠期間は、ブドウの木にも、畑の土にも、水をたっぷり吸収して栄養を蓄えてもらい、翌年のハードな環境での子孫造りに耐えられる体づくりをしてもらうのです。スポーツ選手が、試合で体力を絞りきった後は、栄養補給と休養をしっかりとるみたいに。
今年の冬は、2月後半まで雨が降らず、しかも暖かかったので、木が十分に栄養も休眠もとれないまま春と間違えて発芽が始まりかけました。その矢先に急に寒くなって雨が降り続き、今度は新芽をダメにしてしまう霜の心配をしていたので、先日畑で元気で健康な新芽を見たときは、安堵とうれしさと、今シーズンへの期待がじんわりと広がりました。2018年が素晴らしいヴィンテージとなりますように☆