ワイン造りに和の精神 〜その2〜

前回に引き続き今回も、日本人ではないけれども、日本文化に影響を受けて、和の精神をワイン造りに活かしているワインメーカーさんを紹介します。

Paul Lato氏は、ポーランドで生まれ育ち、カナダへ渡ってソムリエとしてキャリアを積んだ後に、カリフォルニアへとやってきました。初めは、ソムリエとしてワインへの造詣を深めるために、収穫期のインターンシップとして期間限定で来たのですが、そこでワインメーカーとしての素質を認められたことで、ワインメーカーとして生きていくことを決心し、カリフォルニアへ移住してきました。彼の名前を冠したPaul Lato銘柄は瞬く間に評判となり、今では入手困難なワインとなっています。

そんなPaulさんは、趣味として始めた弓道から、日本文化への興味と理解を深め、それがワイン造りへもつながっていきます。例えば、 Syrahの理想の味わいとして、弓道の弓の力強さをイメージするそう。弓道の弓矢は、細くて華奢な見た目ですが、引き絞って放たれる矢の先端は固いものにも突き刺さるほどの力強さがあります。彼の造るSyrahは、無駄なく凝縮感があり、大味ではなく引き締まった力強い味わいです。

また、生け花からもヒントを得ていて、「真・副・体」という基本は、ワインの味わいにも通じるといいます。「真」はブドウの果実そのものの味わいであり、樽の使用など醸造過程で加わる風味や、熟成による風味が「副」「体」となり、それらすべてがバランス良く調和した味わいが理想のイメージ、 まさに無駄なく美しい生け花のイメージと重なるといいます。

さらに、Paulさんは「心を込めてつくる」という表現がとても好きで、毎年仕込むたくさんのシャルドネの樽の中で、最も良い仕上がりとなった一樽のみを瓶詰めした限定ワインのラベルに「心」という名前を冠してリリースしています。

前回紹介したGreg Brewerさんが職人的なのに対し、Paul Latoさんは芸術家気質。新樽を使わないGregさんと、新樽を良く使うPaulさんという、スタイルの異なるワインを造る二人が、どちらもそれぞれに日本文化の影響を受けているというのは面白いですね。