第17回 音楽の習い事は脳の発達によい?

みなさま、こんにちは。シリコンバレーでピアノ教室を主宰している、有座なぎさです。「音楽教育のススメ」と題したコラムを毎月第四週目に担当させていただいています。

さて、今回は、音楽の習い事が脳の発達によい、ということを、脳科学者の瀧靖之先生の見解とともにお話しようと思います。瀧先生は、東北大学の教授であり、脳科学者の視点からたくさんの著書を出版しています。

ピアノや楽器を演奏する、ということは、その過程で実にさまざまな脳の領域を使っています。脳の表面にある大脳皮質は、下の図のように、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つに分かれていて、それぞれ異なる役割を担っています。たとえば、楽譜を見る時には、脳の後ろの方、後頭葉視覚野を使って、音符やリズム、発想記号などを理解し、そしてそれを実際に演奏するときには、前頭前野や頭頂葉を使って、鍵盤や弦の位置や距離を認識したり、指や腕など体の各部位に指令を出す、そして、出てきた音を聴いたり、理解・処理したりするのは、聴覚野や言語野を使う、といった具合です。そして、その動作を何度も繰り返すことによって、脳の領域が活性化され、発達が促されることが知られています。このように、楽器の練習では、たくさんの脳の機能がフル回転していて、脳の発達に大きく寄与していることは、脳科学者の先生も太鼓判を押していることなのです。また、長年、音楽を学ぶことは、神経細胞間のネットワークを発達させて、脳そのものの体積を増やす、ということもわかってきました。そしてそのようにトレーニングされた脳は、他の分野についても、脳を成長させやすい、つまり初めて学習する分野においても、能力を発揮できる可能性が高くなるというのです。またこの脳の働きは、子供の成長過程の話だけに留まらず、高齢者の認知症予防という面でも非常に効果的ということです。音楽のおけいこは、お子さんに限らず、大人になってからでも始められます。年齢、レベルにとらわれず、音楽とともに、楽しく充実した人生を送りたいものですね!