第68回:☆帰国の際のIRA、401Kの注意点☆

 今回は、以前お話した個人向けのリタイアメントアカウントのIRAと企業を通じて加入する401Kの帰国の際の取り扱いについてお話したいと思います。

 まず、それぞれがざっとどんなものかの復習をしておきますと、これらはTraditional IRA/401Kと呼ばれるものとRoth IRA/401Kと呼ばれるものに分けられます。これらのどちらに加入しているかによってメリット・デメリットや帰国時の取り扱いが異なりますのでまずはご自身がどれに積立をしているのかのご確認をお願い致します。

 Traditional IRA/401Kと呼ばれるものは、リタイアメントアカウントに積み立てることによって、Tax Deduction(税控除)ができ、その年のTaxable Incomeが下がることにより節税効果があります。いわゆるPre-Taxと呼ばれるお金で積み立てます。注意点としては、59歳半よりも前に引き出してしまうと通常のIncome Taxに加えてPenalty Taxとして+10%(CA州の場合はState Tax+2.5%も加わります)が税金として取られてしまいます。59歳半以降であっても、引き出したお金は積み立てたお金+運用益どちらにも通常のIncome Taxがかかります。

 また、RMD(Minimum Required Distribution)といって72歳になったら決められた金額の引き出しをしないと、その引き出すべき金額に対しては通常のIncome Taxに加え、ペナルティーTAX+50%が税金として取られるかなり重い措置が取られます。Roth IRA/401Kと呼ばれるものは、積立時には税控除はありません。After Taxというお金で積み立てます。

 では税優遇はどの点にあるかというと、引き出し時、つまりリタイア後になります。59歳半以降に引き出した場合に、積み立てたお金+運用益をすべてTax Freeで引き出しすることができます。RMDなどもありませんので、税金を気にせず好きな時に好きなだけ使えます。

 注意点としては、こちらも59歳半よりも前に引き出してしまうと運用益部分には通常のIncome Taxに加えてPenalty Taxとして +10%(CA州の場合はState Tax +2.5%も加わります)が税金として取られてしまいます。(積立部分はTax Free/Penalty Freeで取り出せます)

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それでは本題の帰国時の取り扱いですが、大きく二点に注意が必要です。
①アカウントが帰国後に維持ができるのか
②日米の税金の違い

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 ①ですが、現在お持ちの証券会社などに確認いただきたいのですが、多くの会社が「米国居住者であること」を条件にしており、帰国時にはそもそも維持ができない場合が多いです。また、できるところも市民権であることが条件になっていたりします。

 そうなると、帰国時に一気に引き出しをすることになりTraditional IRA/401Kの場合はその年のIncome Taxがとんでもなく上がってしまう場合がありますし、さらに59歳半になる前の場合はそれに加えてPenalty Taxも課せられます。こうなると収入や積み立てた金額にもよりますが、積み立てたお金の半分以上が税金で持っていかれる可能性があります。これを避けるためには、帰国後も維持ができる(W-8benの取り扱いのある)会社のアカウントにRolloverして維持するという手段があります。移す時点では税金は発生しません。将来引き出しを開始した際には、日本側で確定申告が必要になります。

 ②ですが、上で日本側での確定申告と言いましたが市民権やグリーンカードを維持している方はアメリカへのTax Returnが必要になります。また、維持をされている場合には、引き出し時に30%の源泉徴収がされてしまいます。

 また、日本での確定申告ですと税法は日本のルールが適応になりますのでRoth IRAの引き出しであっても運用益に税金がかかることになります。これを避けるためには、59歳半を超えている場合はアメリカの居住者である間に全額引き出してしまうことをおすすめ致します。引き出したお金で、別途運用を続けることも可能です。
59歳半未満の場合も、運用益次第ですがPenalty Taxを払って全額引き出してしまうのもありですし、帰国後も維持のできるアカウントに移し替えることも可能です。

 いずれにしてもアカウント、年齢、積立金額、運用益、お住まいの州、居住ステータスの維持などのより最適の手段は異なりますので最新の情報をよく調べた上で、ご自身にとって最良の手段をご選択下さい。