アメリカの住宅界の新スタンダード
シリコンバレー×家=HOMMA
アメリカに住む多くの人たちは今の生活をどう感じているのだろうか?スターバックスやマクドナルド、ウォルマートといった昔ながらの全米チェーンでさえも店舗、オペレーションをリニューアルし時代に乗り遅れないような経営に必死だ。テクノロジーに関しては、iPhoneⅩの顔認証機能やGoogleのスマートコンタクトという涙から血糖値を測定するコンタクト、amazonの商品がワンプッシュで届くアマゾンダッシュボタン等凄まじいい勢いでリノベーションを起こしている。
その一方、「住居、家」に関しては、どうだろうか?市場で取引されている住居の9割が中古住宅で、50年、100年使った住宅が売りに出されることも多い。外観をペンキで塗りなおして綺麗に見えるが建物構造は昔のままのだ。実際に住んでみたら水漏れがする等のトラブルに巻き込まれてしまったという事も少なくないだろう。
また、1割の新築はどうかというと職人がすべて最初から作るため時間もかかり、作る人の技量やモラルによって家が作られる事も珍しくない。そんなアメリカの住宅市場に新しい風を吹き込んだのが HOMMAだ。
HOMMAは建売住宅事業を専門に実施する会社で、2019年3月を目途ににカリフォルニア州ベニシアにプロトタイプとなるHOMMA ONEを完成させ、その後2022年には
米国市場で100戸を展開する目標を持つ。アメリカにある大手のホームビルダーと同様、土地を購入し家を建築し販売するのだが、その家がどこよりもスマートでイノベイティブというのがHOMMAの最大の特徴だ。
実際にイーストベイにあるHOMMAのモデルルームを訪ねた際、手足など細部にわたるまで自由に動かすことができるロボットの中にいるように感じた。専用スマホアプリをダウンロードすれば、「機体」(家)の中に入れば「操縦家事」(スマホ)を握って「機体のスイッチのオンオフから中枢部分の防御」(照明のオンオフから家の防犯)まで指一本でこなせてしまう。まさに現代のテクノロジーを総動員し駆使しつくした今までにない新しい快適さの住居だと感じた。
HOMMAは現代人のライフスタイルに合わせた「住む人のための家づくり」を目指している。一見当たり前のことに思えるが、「IT技術を駆使」して快適な暮らしを送ることができるのだ。注目するポイントとしては家の「管理」と「防犯性」である。
AIスピーカーで照明や空調の調整はもちろんのことスマートフォンアプリで、洗濯や乾燥機、オーブントースターまでも時間管理できるのである。洗濯機や乾燥機に衣服が残っていたら時間経過とともに通知してくれる、洗剤が少なくなるとアマゾンの購入画面に案内してくれる、一定時間温め終わったら過熱しすぎないような機能がついている。
防犯性においてはスマートロックなどのスマートハウス関連製品は家を作る段階で備え付けてあり、人間が家に入ってきたときは専用アプリで知らせてくれる、窓の割れた時の周波数を感知して鳴るブザー等もあり、安心して生活を送ることができる。
多くのことが一括で可能になり、ITリテラシーのない方でも、スマホを片手に簡単に住宅の管理ができるだろう。なぜこのような新しい発想が生まれたのだろうか。HOMMAの創業者でCEOの本間毅氏はこう語る。
『シリコンバレーで家を購入しようとした際、価格の割にクオリティーが低く、どうしても納得いかなかった。また、父方の祖父が京都の宮大工の家系で建築家であり、母方の祖父も建築資材の販売会社を立ち上げたという影響もあり、家に対するこだわりも強かった。アメリカには建て替えるという概念があまりなく、住宅界にイノベーティブな発想も生まれてきていないと感じたため、自分が家を作ることで他人を幸せにできると考えた。』
本間氏は夢や将来を語るうえで大切なことが3つあると考えている。それは「好きでやりたいこと」、「得意なこと」、「世の中の役に立つこと」だと語る。この3つが重なった結果現在のHOMMAという未来のアメリカの住宅市場の先駆けとなる可能性を秘めた会社ができているのだろう。
このうち彼の思う「好きなこと」の基準とは何にも替えられない「情熱」だという。そのことを考え始めるとひと時も休むことなく考えてしまう、思わず突き動かされてしまうモチベーションの源ということなのだろう。本間氏と会話をさせていただくと柔和なその表情の奥にふつふつと湧き上がる住宅業界にイノベーションを起こしたいという情熱、いや「執念」を感じた。
本間氏はFounder&CEO。リーダーシップを発揮し会社のビジョン、将来性を描く。そして彼を支えるチームがそれを細部にまで落とし込んで実行していく。このチームワークの良さは、各人にゴールを設定させるもののそのやり方は本人達に任せているという。マイクロマネージメントは行わない。その一例として休日は各々で相談して取り決めるなど社風は自由だ。上から物事を言うのではなく、社員同士で討論をしながらベストな結論を導き出す、そういった縛りを決めないことがイノベーティブな発想につながっているのかもしれない。
そんな本間氏がアメリカの大地を初めて踏んだのは1996年。中央大学の学生時代、コンピューターがビジネスで実用化されたという世間の流れに後押しされたこともあり、直感を信じて自分の会社を立ち上げた。その当時ホームページのデザインをする仕事をしており、シリコンバレーの視察のためバークレーのサーバーの会社を訪問する為渡米した。当時のことを振り返ると
『その時もシリコンバレーはインターネットの最先端で、どことなくおしゃれで環境も空気も日本と違った。今見たら何という事もない企業だったかもしれないが僕からしてみれば憧れで、こんなところで働ければいいな、と漠然と思っていた。そんなことも、もう20年も前のことでしょうかね』と少しはにかみながら話した。UCバークレー、スタンフォード大学を学生時代に訪れた経験はその後の人生に影響を与えたことは間違いない。
その後ソニー,楽天と13年間サラリーマンとして働く。
『学生時代に起業した会社を閉じると決めてから、もう二度と起業はしないと心に決めていました。ソニー入社後も多くの人から「で、いつまた起業するの?」と聞かれたけど、「やりたい事が見つかったらね」となんとなくお茶を濁していました。
しかし、アメリカで暮らしていく中、学生時代起業した時のビジネスをやりたいという直感とは違う「世の中の役に立ちたい」という「情熱」が本間氏を動かし、現在のビジネスを立ち上げるまでに至ったようだ。
本間氏に学生時代と現在の「起業」の意味合いの違いについて聞いてみた。
『学生時代は簡単に言ってしまえば1つのチャレンジのようなもの。「何かしたい」という思いが強く、タイミングの問題だった。先が全く見えず、何が起こるか全くわからなかったが「世の中が変わる」という直感に従って動いてみたのが学生時代。それに対して今回はイノベーティブな発想を生かし、かつ人の役に立てるという事が大きい。日本は少子高齢化が進んでいるにもかかわらず日本にはたくさんの上場しているキッチン、バスなどのメーカーがある。アメリカを見てみると(前述の通り)まだまだ未発達な部分が多い。この二つの状況を結びつけると「人の生活を家から変える」という当たり前だけれども未開拓の領域があった。私の人生の「人の役に立ちたい」というアジェンダのなかで「家」だったらユニークかつそれを達成できると思ったから起業した。』と熱く語った。
HOMMAは、クリエイティブな考えとともに日本企業を引っ張る最前線にいる。近い将来、ITの最先端であるシリコンバレーの名だたる企業と並んでHOMMAの名前が世の中に知れ渡るのも遠くない未来だろう。