メルカリUSAは日本の子会社ではなく、アメリカのスタートアップ会社
2000年にボルチモアのJohns Hopkins大学で政治・経済を専攻し、そこからエンジニアの道を歩み始めた石塚亮さん。Co- Founderとして、2014年1月〜2017年9月までMercari USA CEOとして米国事業の責任者を務めた。同じくCo-FounderでもありGlobal CEOの山田進太郎氏との出会いなど、独占インタビューにて様々なお話を伺った。
Co-Founder の石塚氏と山田氏が知り合い一緒に働くことになったきっかけ
中学生の頃、ボストンに家族で引っ越しをしました。ボルチモアの大学を卒業後は日本への憧れもあり、東京にある広告制作会社のWEB部門のエンジニアとして3年間働きました。それから、青春時代を過ごしたアメリカに戻ろうと考えていた頃、学生時代から仲の良かったルームメートから「アメリカで一緒に会社を立ち上げないか?」と言われたのがきっかけでアメリカに戻り、Rock Youを2006年にサンマテオで起業しました。当時はFacebookはまだ主流ではなく、MySpace, Friendsterなどが流行し始めた頃で、友人や家族と撮った写真をスライドショーで見てシェアできるサービスを立ち上げ、SNSの繋がりを利用し1週間で100万人のユーザーを獲得するなど確実に成長を遂げていきました。当時VC(ベンチャーキャピタル)に提案をする際には、GoogleやYahooよりもいかに早くユーザーを獲得したかをアピールしていましたね。
その後、2008年にはRock You上に、FacebookのアプリDeveloperであっても広告が出せる広告ネットワークのシステムを構築。2010年頃まではFacebook上でのアプリ利用はRock Youがナンバー1の地位を築いていたのです。ちょうどこの頃、「シリコンバレーで突出した日本人エンジニアがいる」という噂を聞いた山田氏からのコンタクトがありました。
Rock You Asiaを2010年に立ち上げた私は再度東京で働く事になり、東京にて山田氏とより親密になっていきました。その頃Rock You USAに大量の広告費を費やしていたのがあのZyngaでしたが、山田氏もZyngaに深く関わっていたのです(山田氏は2010年8月に創業したウノウ株式会社の株をZyngaに譲渡、2012年1月に退職)。そして私は2013年にRock You株を完全に売却し、同時期に山田氏と共にフリマアプリ「メルカリ」を始める事になりました。
経営戦略・マーケティング方法などを教えて下さい。
2014年1月米国展開に伴いUSAオフィスをSFダウンタウンに立ち上げました。当時は数人の現地社員で立ち上げましたが、2016年6月には1000万ダウンロード達成。9月には2000万ダウンロードを達成しスタッフを増員しビジネスも順調に進んでいました。それと同時に更なる急成長をするには「ローカル化」への課題も見えてきた時でした。2017年9月には以前より親交の深かった、ジョン・ラーゲリン氏(元Google , Facebookで活躍)を新しいCEOに迎える事により、現地ローカル社員も大幅に増やす事によって一気にUSAオフィスのローカル化をすすめました。今では日本人エンジニアの数も1割以下になっています。オフィスも新経営陣が人脈をフル活用できるように、そしてシリコンバレーで働くスタッフが通勤しやすいよう今年5月29日にパロアルトの新オフィスに引っ越しを決めました。今では80名を超えるUSAスタッフがパロアルトオフィスで働いています。ジョンの人脈により現地の優秀な社員を短期間で獲得できたという意味では大成功をしていますね。
米国での認知度を更に高めるには何が必要ですか?
一つは、マーケティング・広告宣伝などはとても重要だと考えています。今年5月からは101や880の幹線道路沿いにビルボード(看板広告)などを出して話題になりました。ラジオ広告なども初めて試みましたし、WEB広告も展開しています。そういったあらゆるマーケティング・広告手法を取り入れながら認知度をさらに増やしていきたいと思います。ある程度はジョンに任せることが今は重要だと思っています。ジョンがCEOに就任してから約一年が経ちますがローカル化が思った以上に進んでおり成果が確実に出ていると思います。
メルカリが「ユニコーン」と評されるほど短期間で成長できた理由と、社風について教えて下さい。
まずは「働く人」の存在が一番大きいと思います。優秀な社員が多く集まっており、その社員たちと一緒に働きたいという人が更に集まってくる。野球で言えば「エースで4番」という個性の強い精鋭集団なのですが社長の山田がそれをうまくマネージメントしていると思います。
もう一つは、個々にある程度の裁量を与えながらもバラバラにならないようにする為に、メルカリグローバルで定めている「バリュー」が役に立っています。
Go Bold-大胆にやろう
All for One-全ては成功のために
Be Professional-プロフェッショナルであれ
このバリューを社員一人一人が理解できるよう、会議室名やTシャツなどにも入れて伝えるようしていますし、一人一人がサラリーマンでなくプロとして会社と対等な立場でいる、という意識を持って働いてくれている事が成功している事だと思います。組織がどんどん大きくなるにつれて「大企業病」ではありませんが、失敗を恐れたり、大胆さがなくなったりというスタートアップの精神を忘れないようにしていかなくてはいけないと常に心がけております。
スタートアップを考えている人へ
まずは興味があるならやってみる事が一番大事だと思います。多くの人は「やって失敗したらどうしよう」と思うのものですが、「失敗したらそれは勲章」になりますから。駄目ならまた就職すれば良いわけですし、起業するデメリットは思ったほどないと思います。
サンマテオのPhilz Coffeeでインタビューに答えてくださった石塚さん。次なる目標は「VCとして起業家を応援していければ」と語った。