Rick Alegria / ミュージシャン・ドラマー “アーティストになるために必要なのは、溺れるように夢中になること”

カーペンターズの楽曲「We’ve Only Just Begun」や2011年のDaft Pankの「Touch」などを作曲し、グラミー賞に何度も輝いた70年代のスター、ポール・ウィリアムの専属ドラマーとして、30年以上共演されているリック・アレグリアさんにお話を聞きました。

ドラムを始めたきっかけ

もともと音楽は好きで学校でかじってはいたんですが、本格的に取り組み始めたのは14歳でバンドをつくってからです。それまでは特に音楽を専門的に勉強したことはありませんでした。実はボーカルをしていたのですが、バンドで誰もドラムが叩けなくて。それなら俺がドラムやるよっていったのがきっかけです。やってみたら誰よりも自分がドラムの演奏が上手で(笑)。始めてみたら、俺はこれ(ドラム)が心から大好きなんだって気づきました。

その後プロのドラマーになった経緯

自分がうまくできることを究めていっただけなんです。ミュージシャンに「なろう」と思ったことは一度もなくて、好きなこと、得意なことを続けていったら、気づいたらミュージシャンに「なってた」というのが、正直な印象です。音楽を奏でずにはいられなかったし、演奏することにのめり込んで行った。アーティストになるために必要なのは、溺れるように夢中になることだと思います。

当時の様子を教えてください

私が20歳頃の時、70年代アメリカでのミュージックは一大センセーションでした。お金を稼ぐのにもいい方法だった。ベンツを乗り回して、まるで自分がロックスターになったような気がしたものです。本当はダメなんだけど、高校の時からプロとしてバーで演奏もしていました。

2000年アルゼンチン、ポール(右)とリムジンにて撮影

ポールの専属ドラマーになった経緯

1978年に、当時の歌姫だったマリア・マルダーが「Open Your Eyes」というアルバムの為にバンドを編成していたので、オーディションを受けてメンバーになりました。マリアと世界ツアーをするなかで、Asleep at the Wheelという、9つグラミーショーを獲得したバンドからスカウトを受けました。それから毎日のように演奏旅行が続き、世界各地いろんなところで演奏したのを覚えています。モーテルやバスに泊まりながら、各地を転々と回り、毎日毎日、クリスマスもドラムを演奏しました。2年半それが続いたとき、もうこれ以上毎日旅ばかりの日々には耐えられない、と思って。「自分がどこに向かっているのかわからないけど、ここではないことは確かだ」そう感じたので、人生で初めてバンドを辞めました。

その後、サンノゼに戻って、ローカルバンドにしばらく所属していましたが、心の底ではいつもここでは終われない、もっとすごいことがしたいと思い続けていたんです。ある日、ポールのミュージックディレクターのクリス・キャズエルが私が所属するローカルバンドの演奏をたまたま聞いていて。ポールの専属ドラマーが結婚のために休むので、代わりに弾いてくれないかって頼まれました。それで、さっそく飛行機で飛んで、トロントの空港についたら、「アレグリア」ってサインをもった男がリムジンを用意して待ってました。リハーサル会場につくと、圧倒されるような雰囲気の大きなホールに、4つのオーケストラが入ってました。そのど真ん中の演奏の中心、ポールが立つ指揮台のすぐ隣に俺のドラムセットがあって(笑)。その当時のポールはカーペンターズに曲を書いたりして、スーパースターでした。

リハーサル後、即その場でポールが僕を雇ってくれました。「今夜ドラムを演奏したアレグリアにはこれからずっと私のバンドで演奏してもらいたい」と言って。ポールと私は共鳴(resonate)しあったんだと思います。演奏しているうちに彼との特別なコネクションを感じました。人生で一番素晴らしい瞬間の一つです。それから彼のバックバンドとして演奏しています。今でも付き合いがあるから、30年来の仲ですね。

たくさんの才能のある人々との出会い

私の人生におこった不思議な事の一つで、シンプルに、より上手くなろうと音楽をやり続けていると、そういうことが起こるんです。ネットワーキングですね。私の演奏を見てくれた人が、「君はいい演奏をするね。うちで演奏してみないか?」ってね。

「君はいい演奏をする」って言ってもらったおかげで、自分は正しいことをやってるって感じました。自分の感性にしたがって、努力して、自分がただ次のステージにレベルアップし続けているという実感がありました。もっとGreatなことがしたい。そうやってゴールを設定して、達成したら次へ次へって。そういった意味では自分はずっとラッキーだったと思います。それでも自分が一番すごいドラマーだと思ったことはありません。私よりすごい演奏をするドラマーにあったことは何度もありますから。

自分よりすごい演奏を見ても、心が折れなかった理由

なぜかいつも前に進み続けられた。きっとそれは、ちょっとだけのエゴ、自分よりはすごいけれど、もっと練習すれば超えられるという自信があったおかげです。加えて自分の中に、ドラムの腕を磨きたい、もっとうまくなりたいという向上心が根底にあるんだと思います。

新しいことに挑戦する恐怖は?

もちろんありました。いつも緊張していた。けれど、それを乗り越えた時の達成感には代えがたかった。緊張していることは、それが自分にとって「大事な事だ」という証なんです。どうでもいいことには緊張しない。うまくやりたいと思うから、緊張するし、緊張するから、もっと練習しようと思う。だから僕はいつも緊張をエネルギーに変えて、いろんなことを乗り越えてきたんです。

現在と今後の活動について

有名な人と演奏するよりも、今は自分らしく演奏することに集中しています。特に力を入れているのは、ボブ・コルバーソンとのコラボです。ボブはStickという、珍しい楽器の世界でもトップクラス級の奏者です。Stickというのは、ピアノでやることをギターに似た楽器でやるというかなりの技術がないと演奏できない楽器です。22日のイベントでは、ジャズやクラシックなど様々なジャンルの曲を弾く予定です。

コンサート情報
Rick AlegriaとBob Culbertsonによるコンサート。クラシックからジャズ、ラテンなど大人から子供まで楽しめる音楽を演奏予定。
2月22日 6PM – 9PM(無料)
Rick Alegria & Bob Culbertson  | www.stickmusic.com
San Pedro Square – 87 N San Pedro Street, San Jose, CA 95110

リック・アレグリア

14歳よりドラムをはじめ、高校卒業頃よりプロのドラマーとして活躍を開始する。ロサンゼルスのThe Dick Grove School of Musicを卒業。Maria Muldaur, Asleep at the Wheel, Bo Diddleyなど著名なアーティストのドラムを務めた後、Paul Williamsの専属ドラマーを30年以上勤めている。現在はThe Harker School、Showcase Music Institute、Stanford Jazz Camp等でドラムを教えるかたわら、様々なジャンルのアーティストとのコンサート、又スタジオミューシャンとしても活躍している。
www.showcasemusicinstitute.com/rick-alegria-bio